佐賀県で起きた風車発電の火災、原因は変圧器部品の腐食か自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2018年02月06日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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アルミバーはなぜ燃えたか、原因と対策は?

 ヒューズと接触する下部アルミバーの組織観察を実施したところ、表面積の92%に0.1〜1mmの腐食が点在していた。これは銅製と異なる材料でできているヒューズと、アルミバーの間で、異種金属による電蝕が引き起こした腐食という。下部アルミバーでこうした腐食が発生していたことから、同ヒューズと溶融した上部アルミバーの間にも、同等の腐食が起きていたと推定した。

残存した下部アルミバーの解析結果。表面に腐食が点在していた 出典:JFEエンジニアリング

 この腐食が火災を引き起こすまでの過程は、以下のように推定している。ナセルの振動によってアルミバーの固定ボトルに緩みが発生し、ヒューズとアルミバーの間にギャップが発生し、接触面積が減少する。これにより局所的に大電流が流れ、6000℃以上のアークが発生。高温により溶融したアルミと銅が周囲に飛散し、周辺物が発火したという流れだ。現地で実機視察を行った風車メーカーのGamesa社も、同様の見解だったという。

 ヒューズとアルミバーの間に発生した腐食を、運用面で防ぐ手立てはなかったのか。JFEエンジニアリングでは運用上の要因として、以下の理由が間接的に影響を与えた可能性があるとしている。

 1つ目が2007年に「該当ヒューズ接続バーの有償材質変更を推奨」の連絡をGamesa社より受けたが、推奨であり必須でないこと、トランスを取り外して工場へ送って改造する必要があり、費用が高額であることから、交換に踏み切れなかったとこと。2つ目が原因となった部分は、ヒューズ交換時のみの点検で、有償交換未実施の判断後も点検回数を増やすなどの予防保全が不十分だったことである。さらに、風車運転データの記録用PCが火災発生の10日前に故障し、部品手配中ではあったものの、データを記録できない状況で運転を継続していたことも影響した可能性があるとしている。

 今後の対策は、技術・運用の両面で実施する計画だ。技術面については、ヒューズ接続バーの材質をアルミから銅に変更し、ヒューズと直接接触しないアルミと銅の固定箇所にはクラッド材(アルミ−銅)を挿入。これにより電蝕の発生を防ぐ狙いだ。運用上の対策では、メーカー有償交換推奨時の対応改善、自主点検項目の追加、風車の運転データが記録できない場合には、「運転を停止した上で速やかに復旧を行う」など、運転条件の再徹底を行うとした。

 串崎風力発電所の今後については、Gamesa社製の同型機種を使用した事業継続、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を新規取得して事業を再立ち上げ、事業撤退など、あらゆる可能性を検討し、2017年度末までに方針を決める計画だ。

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