台風発電は実現するか、チャレナジーが風車を2020年に量産へ自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2018年02月06日 07時00分 公開
[松本貴志スマートジャパン]

1kW試験機の発電量の改善と10kW試験機の設計を推進した2017年

 現在、垂直軸型マグナス式風力発電機の量産に向け着々と準備を進める同社だが、2017年は現在実証中である1kW試験機の改良と、量産の最終段階となる10kW試験機の設計に取り組んだ。

 1kW試験機の改良では、正味発電量の増加を果たした。2016年時点での試験機は、同年の台風13号で運転を行うと「(発電した電力から発電機を動作させる電力を差し引く)正味発電量は0くらいだった」(清水氏)と当時を振り返る。ここから、円筒翼形状や制御を見直し、負荷制御を改善することによって前述の2017年の台風22号では最大正味発電量が1.5kWを達成した。今後も改良を続けることで、「常に正味発電量が1.0kWを超えるように実証を続けていく方針」(清水氏)としている。

正味発電量の増加を示したグラフ。グラフ中の青線が瞬間風速(左軸)、緑線が正味発電量(右軸)(クリックで拡大) 出典:チャレナジー

 また、同社では実用化を見据え、10kW試験機の設計開発も進めた。現在実証中の1kW試験機は直径3メートル、高さ7メートル(回転部の高さは3メートル)ほどの大きさとなるが、10kW試験機は直径7メートル、高さ20メートル(同10メートル)と大幅に巨大化する。

※当初、「現在実証中の1kW試験機は直径、高さともに3メートルほどの大きさ」と記載していましたが、「現在実証中の1kW試験機は直径3メートル、高さ7メートル(回転部の高さは3メートル)ほどの大きさ」との表記に改めました。お詫びして訂正いたします。

 この大型機の実用化に向けて、THKとの協業による低トルクシャフトユニットの開発や、琉球大学と制御シミュレーションモデルに関する共同研究を行うなど、さまざまな企業・機関と協力して開発を行っているという。この10kW試験機は、2018年8月に沖縄県石垣市、2019年にフィリピンで設置し、実証を開始する予定だ。

スカパーJSATとの協業や量産体制構築を進める2018年

 2018年1月には、同社とスカパーJSATの協業も発表した。この協業では、風力発電と衛星通信を合わせたサービスを2019年度中に事業化することを目指し、1kW試験機によって発電された電力によって地上通信機器を稼働させ、衛星通信環境を構築する実証試験を行うもの。

衛星通信実証の概要(クリックで拡大) 出典:チャレナジー

 この取り組みによって、災害通信需要に対するソリューションを強化することや、新興国の離島など、電化の遅れによってデジタルデバイドが発生している地域に通信サービスの提供が可能になるという。共同実証実験は2018年1月〜2019年3月にかけて実施され、通信速度は上り最大400Kbps、下り最大4Mbps(必要電力:最大約45W)を提供する。

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