知らないと損する太陽光発電の「リパワリング」、なぜ海外では重要視されるのか太陽光(2/3 ページ)

» 2018年02月21日 07時00分 公開

品質よりメーカー信用度を重視する日本、異なるドイツ

 日本ではモジュールを選ぶ際に、モジュール本体の品質よりも、むしろモジュールメーカーの信頼度を重要視するケースが多い。一方、ドイツの投資家や銀行は、そのプロジェクトに利用されるモジュールの品質や施工の質を重要視しており、ブランド力やメーカーの信頼度のみで投資を判断するケースは少ないといえる。

 その理由は、例えば、アジアに拠点を置くメーカーのモジュールに不具合があったとする。そのメーカーの信頼度が高かった場合でも、クレームを出したとしても返答があるかは分からず、万が一、訴訟を起こしたとしても訴訟費用のほうが高くなってしまい、時間もお金もロスしてしまうということが考えられるからだ。

 だからドイツでは、モジュールメーカーの信頼度よりも、使用するモジュールの品質自体を判断するためにモジュールの受け入れ検査をしている。

 ドイツでは銀行が、そのプロジェクトで使われるモジュールがどの検査システムを使用し、どのような受け入れ検査をしたのか、さらに第三者機関による検査を実施しているかを融資の判断基準に加えている。

リパワリングは誰のため?

 リパワリングをすることで利益を得るのは、もちろん投資家・発電所オーナーであるのは言うまでもない。日本でFIT導入直後に作られた発電所では、初期費用をできるだけ抑えるために、とにかく安価なモジュールを輸入して設置したケースが多かった。その場合、初期費用の安さを追及しているため、モジュールの受け入れ検査なしで設置しているケースがほとんどだ。今この記事を読んでいる皆さんでさえ、設置前のモジュールに不具合があるということを知らない方も多くいるのではないかと思う。そのため、日本では既に多くの発電所で施工不良に起因するものも含め、発電パフォーマンスが下がっているのが実情だ。

 国内の太陽光発電所は2016年度の時点で、低圧案件が累計36.5GW建設され、高圧案件も39GW建設されている。低圧の場合は、利益を圧迫するという理由から、メンテナンス契約を結んでいないケースが多く、高圧発電所でメンテナンス契約をしていたとしても、大型台風や、いままで経験したことのないような自然災害が起こり、「台風でモジュールが飛ばされる」「洪水で発電所自体が流される」など、発電設備が壊れるという単純な話だけにとどまらず、人命に関わるような事故も多発している。

 これは、ただ単に自然災害によって引き起こされた“仕方がない”不具合なのだろうか。設計や施工の質を上げることで防げた事故もあったはずである。このような設計ミス、施工不良などの人的ミスが原因の1つとなっている不具合・事故も多く発生している。

 また、前回の記事で紹介したが、モジュールのクラック(割れ)は、EL検査でしか発見することができない。目には見えないため、モジュール購入時に存在に気づかず、設置から数年後に経年劣化によって発電低下を起こしている発電所も多く存在する。

 このような状況をうけ、改正FIT法では、「適切に点検、保守を行い、発電量の維持に努めること」「定期的に費用、発電量を報告すること」などの項目が追加されたのは記憶に新しい。

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