送配電網の“利用効率を高める”もう1つの手法として、電源の立地条件に応じて発電側基本料金を割り引く、インセンティブ制度を設ける方針だ。発電所の立地が大都市などの需要地に近い場合には送配電網の整備コストは小さくて済むが、遠い場合にはコストが大きくなる。しかし、現状のルールにおいて発電事業者はこうした立地によるコスト変動を考慮せずに事業地を選定できる。そこで、電源の立地場所が送配電網の追加投資に与える影響に応じて負担額を変える仕組みとすることで、効率的に設備を利用できる場所に電源を誘導していくという狙いだ。
現在も、電源の立地エリアに応じた需要側の託送料金の割引制度として、「需要地近接性評価割引制度」という制度が設けられている。しかし、卸電力取引市場への販売や一般送配電事業者のエリアを越えた取り引きなど、発電と小売りが関係しない取り引きには適用されないため、全ての電源に対する有効なインセンティブとはなっていない。
新たに設ける割引制度は、「基幹系統」と「特別高圧系統」それぞれに対し、将来的な投資を効率化し、送電ロスを削減する効果のある電源に対し、発電側基本料金を割り引く。
基幹系統については、各供給エリア内で、基幹変電所・開閉所単位で見て、相対的に限界送電費用が小さい地域に立地する全ての電源について、基幹系統の一部固定費の費用負担を軽減する。限界送電費用は、「基幹系統の投資効率化効果」と「送電ロスの削減効果」の2軸で評価を行う。割引対象地域は、基幹変電所・開閉所単位で見た限界送電費用が、供給エリア内の平均値を下回るエリアとする。
割引単価(kW当たり)は、発電側基本料金との整合性を図るため、基幹系統の減価償却費および事業報酬のうち、発電側基本料金で回収する金額を発電側の課金対象kWで割った金額を、kW当たりの割引単価の最大値にする。
一方、特別高圧系統に関しては、割引対象地域を「基幹系統投資効率化・送電ロス削減割引の対象地域であること」「『重負荷断面』や『最過酷断面』などの代表的な断面において、特別高圧系統に対して逆潮流していないこと」「空き容量マップにおいて、空き容量がゼロより大きいこと」の3つの条件に基づいて選定する。割引単価は基幹系統と同様の方法で算出する。
なお、基幹系統と特別高圧系統ともに、割引対象地域については5年ごとの見直しを基本とする。そして、この制度の導入に伴い、現行の需要地近接性評価割引制度は廃止する方針だ。
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