ソーラーシェアリングの普及を後押し、推進連盟が設立シンポを開催自然エネルギー(1/2 ページ)

ソーラーシェアリングへの追い風を受けて、新たな団体が設立された。太陽光発電と農業の融合を目指し、各地で取り組みを進めてきた草分け的なキーパーソンが集結。設立記念シンポジウムの様子をレポートする。

» 2018年06月21日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 農地の上で太陽光発電を行う「営農型太陽光発電」、いわゆる「ソーラーシェアリング」への関心が高まっている。既に全国1200カ所以上※1で導入されているソーラーシェアリングだが、2018年5月15日には農林水産省がこれを積極的に後押しする促進策(農村振興局長通知)を発表し、導入拡大の動きに一層の拍車が掛かった。

 こうした状況を踏まえ、「ソーラーシェアリング推進連盟」は同年5月31日、城南信用金庫本店大会議室(東京都品川区)において設立記念シンポジウムを開催した。

設立記念シンポジウム、会場風景(城南信用金庫本店大会議室)

 同連盟は、ソーラーシェアリングの普及促進と幅広い業界関係者のネットワーク形成を目的に、2018年4月9日付で設立された一般社団法人。最高顧問にはソーラーシェアリングの発案者である長島彬氏(CHO 技術研究所代表)が就任し、顧問には吉原毅氏(城南信用金庫顧問)、佐藤弥右衛門氏(全国ご当地エネルギー協会代表理事/会津電力代表取締役社長)が名を連ねる。

 代表理事は馬上丈司氏(千葉エコ・エネルギー)、理事は飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所)、高澤真氏(ソーラーシェアリング上総鶴舞)、椿茂雄氏(匝瑳ソーラーシェアリング)他。幹事は東光弘氏(市民エネルギー千葉)、井上保子氏(宝塚すみれ発電)、近藤恵氏(飯舘電力)など、各地でソーラーシェアリングに取り組む第一人者が集結した。

※1. 農林水産省の集計によると、2017年3月末時点で合計1269件。富山県を除く全国46都道府県で導入されていることが分かる(農林水産省農村振興局農村政策部農村計画課、2018年5月15日発表)、http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-16.pdf

農林水産省もソーラーシェアリング促進策を発表

促進策について語る、農林水産省 再生可能エネルギー室長の鎌田氏

 シンポジウムでは、ゲストスピーカーとして農林水産省・再生可能エネルギー室の鎌田知也室長が登壇。2018年5月15日発表の促進策を中心に、農水省としてもソーラーシェアリングの普及に本腰を入れていく考えを示した。

 「再生可能エネルギー発電設備が農山漁村に立地することで、地域の一次産業が元気になり、地域が活性化することにもなり得ると考えています。ソーラーシェアリングに関していうと、営農と発電の両立によって農家の皆さんの収益向上になりますし、増え続ける耕作放棄地の解消策にもなります」と鎌田氏。こうした観点から、ソーラーシェアリングが行いやすくなるように規制を緩和し、包括的な促進策を取りまとめたという。

 促進策の最大のポイントは、ソーラーシェアリングのための農地の一時転用許可を、これまでの3年間から10年間に延ばしたこと。これまではソーラーシェアリングを始めても3年ごとに許可を取り直さなければならず、事業の継続性が確約されないことから資金調達の足かせともなっていた。これが10年に延長されたことは、資金調達の円滑化という意味でも大いに役立つものと期待される。

 10年の一次転用許可が認められる条件は、以下の3点。これ以外のケースは、従来通り3年以内の一時転用許可となる。

  1. 担い手が所有している農地または利用権などを設定している農地で当該担い手が下部農地で営農を行う場合
  2. 農用地区域内を含め荒廃農地を活用する場合
  3. 農用地区域以外の第2種農地または第3種農地を活用する場合

 この他の促進策としては、ソーラーシェアリングの留意点・注意点をまとめたチェックリストの作成※2、優良事例の紹介、各地の地方農政局にソーラーシェアリングのための相談窓口※3を設けることなどが挙げられた。鎌田氏は、「こういった一連の推進策を金融機関のみなさんにもご理解をいただいて、お金を借りやすくなるようにできればと思っています。一方で、発電優先で農業をないがしろにする事例が出てきかねないという懸念はあるので、そういったことへの対応もしっかりと考えていきたい」と話す。

※2.農業者のための営農型太陽光発電導入チェックリスト(PDF)、http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/r_energy/attach/pdf/180515-4.pdf

※3.農山漁村再生可能エネルギー相談窓口(PDF)、http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/r_energy/attach/pdf/180515-5.pdf

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