地熱発電の導入を後押し、NEDOが「環境・景観配慮マニュアル」公表自然エネルギー

NEDOが地熱発電の導入拡大に向け、「環境・景観配慮マニュアル」を公表。自然環境や風致景観に配慮した設計手法や事例を取りまとめた。

» 2018年07月12日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、地熱発電開発で実施可能な自然環境・風致景観への配慮手法の具体化を目指し、「自然環境・風致景観配慮マニュアル」と「配慮手法パタン参考集」を取りまとめ、このほど公表した。今後、地熱発電の導入を検討している事業者にこれらのマニュアルや参考集が広く普及することで、地熱発電の導入の円滑化かつ加速化が期待される。

図 作成した「自然環境・風致景観配慮マニュアル」(左)と「配慮手法パタン参考集」(右) 出典:NEDO

 再生可能エネルギーの導入拡大が望まれる中、世界第3位の地熱資源ポテンシャルを有する日本では、地熱発電が大きく注目されている。しかし、その資源の約8割が国立・国定公園内に存在することで、これまで地熱開発が進展してこなかった。

 こうした中、2012年3月に出された環境省の「国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いについて(2012年3月27日環境省自然環境局長通知)」により、これまで開発が制限されていた国立・国定公園第2種・第3種特別地域内でも、真に優良事例としてふさわしいものであると判断される場合は、掘削や工作物の設置の可能性についても個別に検討した上で、その実施について開発が認められるようになった。

 この通知では、その取り組みの一つとして、「自然環境、風致景観及び公園利用への影響を最小限にとどめるための技術や手法の投入」が挙げられており、その技術や手法についてどのような対策をとればよいかが課題となっていた。

 そこでNEDO事業では、地熱発電開発で実施可能な自然環境や景観への配慮手法の具体化を目指し、「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法を活用した設計支援ツールの開発」を実施している。今回、同事業で、国内外の地熱発電所の現地調査や開発事業者へのヒアリングなどを「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法」という設計手法の観点から実施・検討し、整理した結果を自然環境・風致景観配慮マニュアルと配慮手法パタン参考集に取りまとめ公表した。

 自然環境・風致景観配慮マニュアルは、自然環境や景観への配慮が重要となる発電所の立地と施設配置に着目し、建設候補地の選定や土地利用計画における配慮に重点を置いたプロセスについて説明している。

 配慮手法パタン参考集は、地域環境や景観に配慮した設計(デザイン)を開発事業者が発電所を計画する際に活用できるよう、実際の地熱発電所建設の際に実施された配慮事例をパタン化し、まとめている。

 地熱発電は、その事業特性や地域特性、事業の進め方や地域コミュニケーションの在り方などが事業ごと・地域ごとに異なるため、実際の開発案件や地域の特性に合わせて適用プロセスを変更することや配慮パタンを選定することが重要となっている。また、同マニュアルや参考集は、今後、他の異なる配慮手法や設計手法を参考に拡充・改善され、より使いやすく、分かりやすいツールに改訂されることが期待される。

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