巨大地震にも有効な免震装置を竹中工務店が新開発耐震・制震・免震

竹中工務店とオイレス工業はアイソレーター「QTB」を共同開発。LRB(鉛プラグ入り天然積層ゴム型免震装置)の上または下に高摩擦すべり機構を重ねて配置することで、通常の地震時と巨大地震時では異なる免震性能が働き、あらゆる地震動に対する安全性を確保する。

» 2018年07月24日 06時00分 公開

 竹中工務店とオイレス工業は、建築基準法で定める“極めてまれに発生する地震動”を上回る巨大地震にも、有効な免震性能を発揮するアイソレーター「QTB(Quake-Thru Bearing)」を共同開発。2018年7月12日、兵庫県神戸市の深江竹友寮建替計画に初適用されたと発表した。

深江竹友寮の完成予想パース 出典:竹中工務店

 これは、オイレス工業の豊富な採用実績を持つ「鉛プラグ入り天然積層ゴム型免震装置=LRB(Lead Rubber Bearing)」をベースに開発。このLRBは、ダンパーの役割を担う鉛プラグと、アイソレーターの積層ゴムを一体化した免震装置で、設置場所もとらず施工性に優れる。支持荷重の範囲は1基あたり約100〜2000t(トン)と広く、さらに鉛プラグの大きさを調整することで建物の規模や特性に合わせた設計も可能になっている。

 QTBは、LRBの上または下に、フッ素樹脂系すべり材とステンレスすべり板で構成された「高摩擦すべり機構」を重ねて配置することで、巨大地震にも有効な免震性能を2段階構造で確保している。

 通常の地震時には、「高摩擦すべり機構」の摩擦力が地震力を上回るため、すべり機構部が摩擦力によって水平に固定されたままになる。そのため、LRB部が地震の動きに追随し、免震性能を発揮する。一方、巨大地震時は、摩擦力と地震力が同等になるため、すべり機構部が摩擦力で固定されなくなる。これにより、地震の動きに追随する部分がLRB部からすべり機構部に切り替わり、上部建物への過大な地震力の伝達を防ぐという。

QTBの構造と2段階による免震性能 出典:竹中工務店

 初適用となった深江竹友寮には、竹中工務店の防災安全システム「THE免震 ワイドレンジシステム」が採用されている。同システムは、新開発の「QTB」、弾性すべり支承、オイルダンパーで構成するハイブリッド免震システムで構成。同寮の設計にあたっては、建築基準法の設計用地震動に加え、南海トラフ地震による長周期地震動、上町断層帯を震源とする直下型地震動に対する安全性も確認しているという。構造/階層はRC、S、SRC(免震)/3階建てで、延床面積は6203m2(平方メートル)。工期は2018年4月〜2019年7月。建築主、設計・施工ともに竹中工務店。

 なお、同社では「QTB」の今後の採用先について、病院・行政庁舎・警察署・消防署・学校といった巨大地震直後も、機能維持が求められる施設の他、原子力発電関連施設・バイオハザード対応施設など、最高度の耐震安全性が必要とされる建物への適用拡大を図っていくとしている。

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