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VR/ARが描くモノづくりのミライ 特集
インタビュー
» 2018年09月12日 06時00分 公開

建設×VR/AR/MR:新築営業の8割で利用、積水ハウスが提案する“ヴァーチャル住まいづくり” (1/2)

積水ハウスは、ハウスメーカーならではのVR技術を活用した新サービスを2018年2月から展開している。同社のVRサービスは、BIM(Building Information Modeling)に近いオリジナルのCADシステムをベースに、一般社員によって制作できるシステムが構築されており、外注がなく社内だけで完結しているという他のVRサービスにはない強みがある。

[石原忍,BUILT]

 積水ハウスは、2018年2月からVR(Virtual Reality)技術を活用して、無料で新築戸建て住宅のVR映像を制作するサービスを開始。現在では、全国386カ所の住宅展示場や各支店で営業提案に活用されている。顧客の設計プランに応じて、VR空間を体験できるように全国で実用化したのは住宅業界初だという。

 VR映像は、スマートフォンでQRコードを読み取ることで、いつでもどこでも視聴することができ、完成前に家の内観を360度で確認したり、リビングからキッチン、1階から2階へなど、視点移動することも可能だ。VRサービスを開発した意図と、ハウスメーカーが考えるVR技術の今後の可能性について、開発に携わった技術業務部 課長・橋本武仁氏(一級建築士)と、取材場所の駒沢シャーウッド展示場 店長兼課長・大塚篤志氏にインタビューした。

オリジナルCADをベースにVRデータの制作は社内で完結

VRシステムを開発した積水ハウス 技術業務部 課長・橋本武仁氏

橋本 開発は、営業力の強化を目的に、住宅購入を検討される方へ、訴求力の高いアプローチを模索したとき、VRに着目したことがきっかけ。2018年1月に全国の住宅展示場で開催された「新春ハウジングフェア」の目玉とすべく、2017年11月から急ピッチで開発に着手した。

大塚 マンションにはモデルルームがあるが、一戸建ては邸ごとに内装も外装も異なるため、モデルハウスだけでは購入検討者にイメージが伝わりにくい。3次元の仮想空間であれば、広いリビングや吹き抜け空間、大開口部の雰囲気、木質仕上げの質感などをリアルな体感として感じ取ってもらえる。

橋本 これまでにも、住宅のモデルプランやマンションギャラリーでVRを活用する例はあったが、当社のVRは独自のCADシステムと連動しているため、顧客の要望に応じたオリジナルプランの仮想空間が作成できるのが他にはない特徴だ。現状でCADで図面を作るプレゼン提案は1カ月に1万件以上あり、これらの全く設計が異なるプラン全てでVR体験は可能だ。

紙製の組み立て式HMDにスマホを差し込んでVR体験

橋本 VRデータを作成する流れとしては、オリジナルCAD「SIDECS(シーデックス)」で作成した戸建て住宅のCADデータをオリジナルCGモデラ―「CG3S(シージースリーエス)」でCG化。Chaos SoftWare社のCGレンダラー「V-Ray(ブイレイ)」で、レンダリングとライティングを行い、VR用の3Dモデルが完成する。

 これまで、図面から高精度の3Dデータを制作するには、制作を外注して30万円近いコストと、数カ月の制作期間を要していたため、高級住宅向けなど、限定的な利用にとどまっていた。新開発したVR制作のシステムでは、社内だけで完結するシステムを構築。オリジナルのCADデータをサーバに送るだけで、VR画像へと自動変換される。製作にかかる時間はわずか4時間ほどで、これにより、設計からプレゼンまでのタイムラグを大幅に短縮した。さらに自動化により、CADやCGソフトを触ったことがない支店の営業サポートスタッフでも、太陽光の向きを決めるなど数点の項目を操作するだけで、簡単に3次元データを制作できるようになった。

3階建てのVR空間
駒沢シャーウッド展示場 店長・大塚篤志氏

大塚 VRは当社のWebサイト上でサンプルとして無料公開している。関東工場にあるTVCMに使うコンセプトモデルと、住宅展示場にある建売モデルの計5種類の住宅でVR体験ができる。VR内見はどういものか、まずは入り口として多くの方に最初の糸口として見てもらえれば。

 通常業務でのVR内見は、住宅購入を検討している方へのプレゼンを後押しすることに役立っている。住まいづくりは、ユーザーごとに敷地や家族構成、ライフスタイル、嗜好が異なるため、プランや内外観は同じものは一つとしてない。VRサービスは、各家庭で異なるプランを精巧なVRデータとして無料で制作している。別途料金を取ることがないため、営業折衝や設計提案上のコミュニケーションがはかどり、提案力や競争力が大幅に向上した。

 VRサービスを行うタイミングは、設計がある程度固まった段階で、営業フォローの一環として、客先で360度の3D空間を体験してもらっている。現在では、案件全体の約8割でVRサービスが日々の打ち合わせに利用されている。

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