災害対応やインフラ維持管理などドローンの可能性、先進的な自治体の施策事例から読み解く第2回ドローン×インフラメンテナンス連続セミナー(2)(4/4 ページ)

» 2018年09月20日 14時30分 公開
[石原忍BUILT]
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講習会の定期開催やオリジナルのライセンス制度を運用

福島県・中村主査

 福島県の無人航空機活用の取り組みでは、県土木部 技術管理課 主査・中村太郎氏が講演した。福島県では、ドローン技術を「災害対応」「日常の維持管理」「情報発信」の3点で活用しているという。

 ドローン導入の背景には、2011年に福島を襲った3.11東日本大震災、同年7月の新潟・福島豪雨、同年9月の台風15号の3つの災害が契機となったという。

 また、インフラ維持管理の観点からは、管理延長でみると、県内には全国3位の道路、全国4位の河川があり、広範な規模で安全なインフラ点検が求められていることもある。

 広報的な面でも、3.11の被災地が現在9割近くまで復旧・復興が進められ、事業効果の対外的な発信といった面からもドローン活用は後押しされている。

 ドローンは、海外製の汎用性が高い「INSPIRE2」10機と、福島県で製造されている「QC730」1機を採用。安全な運用のために、飛行頻度の管理や飛行範囲の明確化、飛行体制の確立を明記した県独自のマニュアルをとりまとめ、“日本一の安全基準”を標ぼうし、ドローンの運用を行っている。

導入したドローン2タイプ

 ドローンの法律知識(学科)や操作技能(技能)を学ぶ講習会も定期的に開催し、2017〜2018年度は8回行い、延べ66人の職員が参加した。資格についても、独自のライセンス制度を設け、ライセンス所持者のみが機体操作を行う方針を取っている。一度保有者になっても、毎月10分以上の飛行を義務化することで、技術を担保し、スキル低下を防いでいる。

安全な運用のための取り組み

 これまでの活用実績では、災害対応で豪雨などの地滑り現場などを空撮し、全景の把握や被災が続く中でもリアルタイムでの状況確認に役立てた。

 インフラ維持管理では、草木が生い茂る河川で、上空から堆積状況を調査し、優先順位を付けて計画的な維持管理につなげた。

 情報発信では、いわき市の薄磯地区で、海岸堤防が完成し2018年に震災以降初の海開きを行ったことに合わせ、事業の進捗(しんちょく)状況をドローンで空撮し、写真パネルなどを道の駅や観光地に掲出してPR。空撮写真は、国への予算要求で要望資料として活用した他、専門研修資料や職員募集案内にも活用した。

 将来的な展開について、中村氏は「活用事例を集めた事例集の作成など、水平展開を考えている。ドローン活用を定着させるためにも、予算要求資料や施設点検での標準化を目指したい。次の活用方法を見据え、上位ライセンス制度などの体制づくりにも着手する。世界初のドローン長距離飛行試験拠点として整備を進めている“福島ロボットテストフィールド”には、試験トンネルや橋梁を用意している。安全かつ積極的に新たなドローンの活用方法を模索していく」と抱負を語った。

これまでの主な活用実績
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