数年で大きな変化、ソーラーシェアリングを巡る政策動向ソーラーシェアリング入門(4)(2/2 ページ)

» 2018年10月29日 07時00分 公開
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ソーラーシェアリングの本格的な政策導入が加速

 匝瑳メガソーラーシェアリングの落成式から2カ月後の2017年6月9日に、政府の成長戦略「未来投資戦略2017」が閣議決定されました。従来は「日本再興戦略」として策定されてきた成長戦略が発展し、「経済財政運営と改革の基本方針2017」に基づいたこの未来投資戦略の中で、営農型太陽光発電について言及する下記の一文が盛り込まれました。

 農業生産を支える多様な施設・設備の設置や運用による担い手の多様な経営発展に資するため、農業ハウス等の農地法における取扱いについて検討を行う。あわせて、農地の有効活用及び農業者の所得向上に資する営農型太陽光発電の促進策を検討する。(未来投資戦略2017 p.147)

 これは、「攻めの農林水産業の展開」に関する章の中で、新たに講ずべき具体的施策の一つとして挙げられています。閣議決定文書である政府計画の中に、このように「営農型太陽光発電の促進策を検討する」という一文が入ったことで、ソーラーシェアリングを巡る政策は急展開していきます。

 この計画が公表された後の平成30年度概算要求では、農林水産省と環境省がソーラーシェアリングに関する新たな予算措置を公表し、いずれも本予算に盛り込まれました。農林水産省は「営農型太陽光発電の高収益農業の実証」として、環境省は再生可能エネルギー電気・熱自律的普及促進事業の中で「再生可能エネルギーシェアリングモデルシステム構築事業」として補助事業を行っています。

 また、2017年11月には農林水産省がソーラーシェアリングの導入に関するガイドラインを公表し、その中では具体的な導入方法が紹介されたほか、金融面での支援制度拡充などが盛り込まれています。

 このように2017年度からソーラーシェアリングが政府の政策における明確な位置づけが始まり、補助事業を含めた普及促進を図る取り組みが加速し始めました。

ソーラーシェアリングを巡る制度導入の本格化

 2018年度になると、更に政策導入の動きが広がります。2018年4月に公表された第五次環境基本計画の重点戦略「地域資源を活用した持続可能な地域づくり」において、地域のエネルギー・バイオマス資源の最大限の活用として営農型太陽光発電の推進が盛り込まれ、環境政策でもソーラーシェアリングを導入しようという姿勢が明確になりました。

第五次環境基本計画の重点戦略「地域資源を活用した持続可能な地域づくり」に、営農型太陽光発電の推進が織り込まれた 出典:環境省

 そして、2018年5月15日にはついにソーラーシェアリングの制度そのものの改正が行われます。従来の「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(24農振第2657号)が廃止となり、新たに同じ名称の新通知(30農振第78号)が発出されました。この制度改正で最も大きなものは、一定の条件を満たすとソーラーシェアリングの実施に必要な農地の一時転用許可の期間が、従来の3年以内から10年以内に大幅延長されることです。この改正の詳細は以前の記事で取り上げていますのでここでは割愛しますが、改正に際して農林水産省から示されたソーラーシェアリングに対する取り組み姿勢は以下のように表現されています。

営農の適切な継続と農地の上部での発電を両立した取組+継続した売電収入による農家所得の増加

→条件不利地域における営農の継続、荒廃農地の再生など、農業経営の改善や地域の活性化の効果が期待

 本稿執筆時点での最新の動きでは、2018年6月15日に閣議決定された「未来投資戦略2018」に再びソーラーシェアリングへの言及がなされ、今回は昨年の「営農型太陽光発電の促進策を検討する」という文言が「営農型太陽光発電を促進する」という形でより踏み込んだ表現となりました。未来投資戦略も環境基本計画も、大枠は世間で報じられながらも一般の人々にはさらっと流されてしまうことが多いです。しかし、ことソーラーシェアリングについての扱いを読み込んでいくと、こういった閣議決定文書や政府の基本計画で「促進する」や「推進する」という表現が使われているということは、これからもっと普及促進のための施策がとられることを意味しています。今後は平成31年度予算などを含めて、新たな政府施策の動向を注視していく必要があるといえるでしょう。

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