太陽光の“発電事業者”による新団体「ASPEn」誕生、その設立の狙いとは?自然エネルギー(3/4 ページ)

» 2018年12月10日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

学術界、金融界など、多方面から支援表明

ASPEn副代表理事の馬上丈司氏

 ASPEn専務理事の馬上氏は、農業と照らし合わせながら、太陽光発電の意義を語った。馬上氏は、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の運営やコンサルティングを行う千葉エコ・エネルギーの代表取締役であり、2018年4月に設立された一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟の代表理事でもある。

「自然エネルギーを、どこに、どのように増やしていくかが重要です。発電所が与える環境負荷についても考えていかなければなりません。ソーラーシェアリングを初めとして、太陽光発電は、一次産業と調和していくことが可能。農村にさまざまなメリットをもたらすこともできます。大切なのは、われわれが生きるために必要なエネルギーと食料、両方をしっかりと作っていける仕組みでしょう。それは、人々の環境に対す意識、食に対する意識を変え、エネルギーの在り方そのものを変えるきっかけにもなるはずです」(馬上氏)。

安田陽特任教授

 京都大学大学院特任教授の安田氏は、太陽光発電のベネフィット(便益)を数字で示してしていくことが重要だとして、谷口代表理事が語ったASPEnのミッション「再生可能エネルギーの便益の周知」に期待をかける。

「再生可能エネルギーの導入が世界中で進んでいるのは、費用に対してベネフィットが大きいからです。ベネフィットとは、一部の企業にメリットがあるというようなものではなく、国民全体に還元される性質のものです。日本ではコストばかりが議論されていますが、ベネフィットと合わせて考えていかなければ正しい評価はできません。そして大事なのは、ベネフィットを数値化して定量分析すること。それが示せれば、再エネが将来への投資であるということも理解されるでしょう。われわれも頑張りますが、産業界の方々も、産業界だけで議論するのではなく、官・学それぞれに、しっかりやれとプレッシャーをかけていただければと思います」(安田氏)。

安田陽特任教授が紹介した再生可能エネルギーの便益に関する資料
城南信用金庫の吉原毅氏

 城南信用金庫の吉原氏は、自著『世界の常識は日本の非常識 自然エネは儲かる!』を掲げながら、太陽光発電事業が企業も地域も潤すビジネスであることを強調。金融機関として、再生可能エネルギーを全面的にバックアップしていくことを明言した。

 また、吉原氏の講演中には、原発反対訴訟の弁護士として知られる河合弘之氏も飛び入りで登壇。「皆さんが仕事を頑張れば頑張るほど、日本はもちろん世界の環境が良くなる。お金儲けに努力することが、そのまま社会貢献になる」と、シンポジウム参加者にエールを送った。

 シンポジウム終盤には、谷口氏、馬上氏、安田氏、吉原氏によるパネルディスカッションが行われ、改めて健全な再エネ産業の発展を誓い合った。谷口氏から「FITの買い取り期間(20年)を前提にした融資ではなく、30年間の発電事業を見据えた融資は可能か?」と問われたのに対し、吉原氏が「金融機関は資金が余って困っている。住宅ローンだって35年があるわけだし、採算が得られる太陽光発電なら30年だって貸せる」と答えるなど、大いに盛り上がった。

パネルディスカッションの様子

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