電気料金を引き下げる節電(第5回)−「サーバー」の傾向と対策:スマートジャパン2012総集編
オフィスにある機器の中で節電対策を進めにくいのがサーバーだ。大量の電力を消費しているが、どの企業にもサーバーを使わないと成り立たない業務が多くある。サーバーの節電対策で最も効果が大きいのは、仮想化によって台数を減らす方法。最近のサーバーは消費電力も大幅に低下している。
すでに実施済みの企業は多いと思うが、ここで改めてサーバーの仮想化による節電効果を検証してみよう。参考になるデータをマイクロソフトと富士通が公開している。
マイクロソフトはWindowsを搭載したサーバーを集約したケースで、富士通は性能の高いブレードサーバーに集約したケース(図1)を想定して、それぞれ消費電力の違いを示している。どちらの場合でも約75%の消費電力を削減できる。つまり電力使用量が4分の1に減るわけで、極めて大きな節電効果を発揮する。
マイクロソフトの事例は24台のWindowsサーバーを仮想化によって6台に集約したもので、サーバーの台数分だけ消費電力が減る。仮想化しない場合には個々の業務を特定のサーバーで実行するために、業務の性質によって1日のうちにサーバーの能力をフルに活用しない時間が多くある。仮想化すれば少ない台数のサーバーで数多くの業務を効率的にこなせるようになる。
富士通の事例は30台のWindowsサーバーを3台の高性能なブレードサーバーに置き換える。このケースでは電気料金が5年間に203万円も減る(図2)。いずれの事例を見ても分かることは、通常はサーバーの能力の4分の1程度しか活用していないという点だ。まだ仮想化を実施していない企業は早急に検討すべきである。
消費電力の上限を決める「パワーキャッピング」
さらに最近のサーバーは新しい機能を備えており、仮想化をベースに一歩進んだ節電対策が可能になっている。例えばサーバーの消費電力の上限を決めてしまう「パワーキャッピング」と呼ぶ機能がある。業務が集中してサーバーに大きな負荷がかかるような状況でも、決められた値を超える電力は消費しないため、節電効果は大きい。
もちろんサーバーが最高の性能を発揮できなくなるが、業務に支障を与えないように運用することは可能だ。そのためには、サーバーが電力を消費するパターンを把握する必要がある。
パワーキャッピングを利用できる最近のサーバーは消費電力を記録する機能も備えている(図3)。これをもとにサーバーの消費電力を抑える時間帯を決める。通常は昼のピーク時に消費電力を抑えるか、夜間に待機電力を削減するかのどちらかになる。
パワーキャッピング機能を利用するためには、サーバー1台ごとに設定を変更しなければならない。これが面倒でパワーキャッピング機能を利用しないケースも多いようだが、NECが2012年7月に発売したサーバーには「グループパワーキャッピング」と呼ぶ機能が搭載されている。
グループパワーキャッピングは複数台のサーバーで構成したグループの合計消費電力を抑える機能である。優先度の低いサーバーの消費電力を抑えながら、優先度の高いサーバーに最高の性能を発揮させることが可能になる(図4)。サーバー1台ごとに消費電力の上限を設定する必要がないので、設定の手間も減る。
古いサーバーは思い切って買い替えも
パワーキャッピングの機能は数年前から各メーカーが搭載するようになったので、古いサーバーでは利用することができない。サーバーの消費電力が最近の製品と比べて明らかに大きいようであれば、思い切って買い替えることも検討してみたい。
NECの製品で同じ価格帯のラックマウント型サーバー(プロセッサを2個搭載)で比較すると、5年前の2007年モデルと最新の2012年モデルでは消費電力が半減する。一方で性能は約6倍に向上している。実質的な消費電力は12分の1になるわけで、仮想化やパワーキャッピングによる節電効果を加えると相当な違いになる。
連載第1回:「照明」の傾向と対策
連載第2回:「空調」の傾向と対策
連載第3回:「パソコン」の傾向と対策
連載第4回:「プリンタ」の傾向と対策
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