能登半島で大規模に風力発電を展開、バイオマスタウンも広がる:日本列島エネルギー改造計画(19)石川
石川県の北部は日本海に突き出た能登半島である。海からの強い風が吹く沿岸地域に、大型の風車が数多く立ち並ぶ。中でも半島の最先端にある珠洲市は再生可能エネルギーの一大拠点になっており、大規模な風力発電所のほかにバイオマス施設やメガソーラーまで揃う。
能登半島は地形が美しく、観光の名所として県庁所在地の金沢とともに全国に名を知られる存在だ(図1)。この能登半島を中心に、石川県の再生可能エネルギーの取り組みが活発に進んでいる。
特に日本海に面した立地を生かして大規模な風力発電所が数多く稼働中である。過去10年間にメガワット級の風力発電所が13か所も造られた。石川県の風力発電の規模は3年前の調査では全国で9番目だったが(図2)、おそらく現時点ではもっと上位にランクされるだろう。
風力発電で重要な点は「風況」が良いことだ。強い風が安定して吹く場所であれば、年間を通じて大きな発電量が期待できる。中でも一番の要素は平均風速が大きいことで、6メートル/秒を超えることが風力発電の目安になる。
その点で能登半島の沿岸部、特に北側と西側は年間の平均風速が6メートル/秒を超える。一部には平均8メートル/秒の強風が吹く場所もあり、風力発電には打ってつけの立地条件を備えている(図3)。
ちなみに平均風速が6メートル/秒の場合で発電効率は20%だが、8メートル/秒になると35%に上昇する。太陽光発電の発電効率は12%程度であり、能登半島のように風況の良い場所には風力発電が向いていることがわかる。
能登半島で最大の風力発電所は最北端の珠洲(すず)市に建てられている。2か所に分散しているが、双方を合わせると30基の大型風車を使って45MW(メガワット)の発電能力がある(図4)。平均風速が6メートル/秒としても、年間に8000万kWh程度の電力量になる。これだけで2万世帯以上の家庭が使う電力を供給することができる。
将来に向けては、洋上の風力発電が有望だ。能登半島の沖合は陸地よりも平均風速が大きく、海岸線に近い場所でも7メートル/秒を超える。周辺の海域は漁業が盛んなため、環境評価を含めて調整が必要になるが、国内でも有数の洋上風力発電の最適地と考えられている。
さらに風力に続いてバイオマスや太陽光でも珠洲市が注目の的だ。石川県内では「バイオマスタウン構想」を推進中の市町村が6か所あり、珠洲市もそのひとつである。海産物の加工による廃棄物が大量に出ることもあって、家庭の生ごみなどと合わせて市の浄化センターでバイオマスによるメタンガスの生成に取り組んでいる(図5)。
一方で北陸電力が珠洲市内で2012年10月末から、1MWの太陽光発電所を運転開始したところだ。能登半島の最先端の地で、自然環境を最大限に活用した再生可能エネルギーの導入が着々と進んでいる。
2014年版(19)石川:「農村の再生は太陽光でスマートアグリ、砂防ダムに小水力発電を」
2013年版(19)石川:「日本海へ延びる長い半島に、風と水と森から電力を」
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