太陽光発電の買取価格に意見書、「10kW以上50kW未満」を別区分に:法制度・規制
先ごろ政府の委員会がまとめた2013年度の買取価格の最終案に対して、公益財団法人の「自然エネルギー財団」が6項目からなる意見書を提出した。その中で太陽光発電システムの導入コストが高い「10kW以上50kW未満」の買取価格を「50kW以上」と分けるべきだと主張している。
「自然エネルギー財団」はソフトバンクの孫正義社長が2011年9月に設立した財団で、自然エネルギーの普及・促進のために必要な政策やビジネスモデルの提言を目的に活動している。孫氏が会長を務めるほか、音楽家の坂本龍一氏などが評議員として参画している。
同財団が意見書を提出したのは、2013年度の買取価格に対してである。3月11日に政府の「調達価格等算定委員会」が出した最終案に関して、担当省庁の資源エネルギー庁が3月22日までパブリックコメントを募集しており、それに合わせて提出した。
意見書の内容は以下の6項目におよぶ。
1.導入目標設定および調達価格の将来見通しの提示
2.調達価格のきめ細やかな設定
3.回避可能原価の算定と設定
4.接続義務の厳格化・接続費用の妥当性の評価
5.委員会の検討項目について
6.「効率的な事業実施」の定義
このうち特に早急な検討が必要になるのは上記の2と3である。2の調達価格(=買取価格)の設定に関しては、政府の委員会でも議論になった「10kW以上50kW未満」の太陽光発電システムの問題を指摘している。
資源エネルギー庁が調査した結果から、非住宅用の太陽光発電システムは出力規模が小さくなるほど費用の単価が高くなることが明らかになっている(図1)。それにもかかわらず委員会の最終案では、出力規模が大きいシステムと合わせて一律に現行の40円/kWh(税抜き)から36円/kWh(同)に引き下げる。財団の意見書では10kW以上50kW未満を別の区分にして、適正な買取価格を設定するように求めている。
もうひとつ重要な問題である「回避可能原価」は、電力会社が再生可能エネルギーを買い取った場合に電気料金に上乗せできる賦課金に影響するものだ。電力会社が火力発電などに必要なコストが「回避可能原価」(=可能回避費用)で、それを上回った分の買取費用を賦課金で補うことになっている(図2)。
この回避可能原価が本来あるべき水準よりも低く設定されている、というのが財団の指摘である。現在の回避可能原価は4円〜8円/kWhとされているが、太陽光発電は夏のピークカットにつながり、石油火力を代替する効果がある。従って太陽光発電の回避可能原価は石油火力のコスト(2010年時点で16.6円kWh)を反映すべきである、という主張だ。
そうなると、現在の電力会社による買取分の多くは太陽光発電によるものであるため、賦課金は大幅に下がる。再生可能エネルギーの問題点のひとつとして、利用者による賦課金の負担が挙げられるが、財団の主張が認められれば、この問題も緩和されることになる。
経済産業大臣は3月31日までに2013年度の買取価格を決定しなくてはならない。委員会の最終案を修正する時間的な余裕はないとみられるが、財団の意見に対しては適正な回答が求められる。最終的にどのような判断を下すのか注視したい。
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