ホンダが目指す理想の工場、寄居で実現か:エネルギー管理
工場が排出するCO2を正味ゼロにする。これがホンダの目標だ。そのためには、工場内のエネルギー消費量を削減し、工場内の発電と組み合わせる必要がある。2013年7月に完成する寄居工場にはどのような仕組みを盛り込んだのだろうか。
自然な節電はどこまで可能なのか。さらにどこまで環境負荷を下げられるのか。オフィスや住宅で進むこのような取り組みは、工場でも課題になっている。
ホンダは製造業におけるエネルギー消費と環境負荷と同時に引き下げる取り組みを進めている。同社の3つの目標は実現がいかにも難しそうだ。自社の再生可能エネルギー技術を使って発電からクルマ走行までCO2排出量ゼロを目指すことが1つ。第2にエネルギーマネジメントシステム(EMS)を使ったエネルギーリスクのゼロ化、第3に3R(Reduce Reuse Recycle)を適用した廃棄物ゼロだ。
この最終目標に一歩近づいたのが、2013年7月に生産を開始する埼玉県の寄居工場である(図1)。「自動車の生産を開始し、実際の数値を測定するまでは断言できないが、最も環境負荷の小さい自動車を、最も環境負荷の小さい工場で作るという目標が実現できると考えている」(ホンダ)。
寄居工場の目標を実現する手法は大きく3つある。FEMS(Factory EMS)の採用と、熱利用の最適化、太陽光発電システムだ。
FEMSを用いて、エネルギーの使用状況や設備の運転状況を監視し、使用量の目標管理や異常リスクの対策を行う。電力のピークカットや再生可能エネルギー利用の最大化、製造装置ごとの負荷の統計調査などにも役立つという。FEMSは自社開発ではなく、他社製品を選択した。
熱利用の最適化として2つの例を挙げた。まず廃熱の利用だ。工場内のエアコンからの廃熱(28℃)を暖房用熱源としてヒートポンプ冷凍機に活用した。従来のボイラー熱源だけの場合と比較して、排出するCO2量を60%低減できる。エネルギーコストも下がる。
もう1つは作業員向けの空調の最適化だ。室内全体を空調するのではなく、人の作業空間に限って気流を流す空調システムを導入。これによって作業員の快適さを損なわず、空調エネルギーを従来比で40%削減できる。
太陽光発電システムは、出力2.6MWを計画する。これによりCO2排出量を年間1200トン削減できる。高温にならない部分の工場の屋根と管理棟の屋根に1万9953枚の太陽電池モジュールを敷き詰める。太陽電池としてホンダソルテック化合物薄膜型(CIGS)を採用した。
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