海水からリチウムの抽出に成功、日本の原子力研究機関が世界初:蓄電・発電機器
電気自動車をはじめ蓄電池の分野で利用量が急増しているリチウムはレアメタルに分類されていて、日本では100%を輸入に頼っているのが現状だ。その貴重なリチウムを海水から分離・回収することに世界で初めて、日本原子力研究開発機構が成功した。
蓄電池に使われているリチウムイオン電池と、未来の原子力エネルギーとして研究開発が進められている核融合には1つの共通点がある。どちらも資源としてリチウムを必要とする。リチウムは南米のチリなど限られた地域でしか産出できないレアメタルのひとつだ。
日本原子力研究開発機構(JAEA)は世界で初めて、リチウムを海水から分離・回収する技術を確立することに成功した。茨城県にあるJAEAの核融合研究開発部門が政府の「最先端・次世代研究開発支援プログラム」の一環で開発してきた。JAEAは高速増殖炉の「もんじゅ」を開発・運営する機関でもある。
リチウムはレアメタルとはいえ、海水の中には無尽蔵に含まれている物質で、いかに効率的に抽出するかが大きな課題になっている。JAEAの研究開発部門はイオンの伝導体を通してリチウムを移動させる原理を発案して、分離装置で回収する方法を実証した(図1)
リチウムは電気を運ぶイオンになりやすいために、充電・放電を繰り返す蓄電池の用途に向いている。ただし化学反応が進みやすいことから、天然の状態で存在する場所は限られている。現在は南米で塩湖の水を1年以上かけて自然蒸発させて抽出する方法しか見つかっていない。
JAEAが開発した海水から分離・回収する技術を実用化できれば、リチウムを短期間に効率よく製造する道が開ける。さらに電気自動車などで使用済みのリチウムイオン電池からリチウムを回収することにも応用できる見込みだ。今後は分離・回収装置の規模を拡大したパイロットプラントを建設して実用化を進めていく。すでに特許は出願済みである。
一方で核融合の技術開発の先行きは不透明な部分が多い。現在の原子力発電は核分裂でエネルギーを発生させるものだが、核融合によるエネルギーは別の特性があり、一長一短がある。放射性物質を放出する点では核分裂と同様に人体に対する影響は極めて大きく、安全性の確保が欠かせない。リチウムの抽出技術が安全な用途に限って応用されることを望みたい。
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