50キロ以上も離れた2つの自治体、太陽光発電と災害対策で連携:スマートシティ
独自のエネルギー戦略を展開する東京都の世田谷区が、直線距離で55キロメートルの場所にある神奈川県の三浦市に太陽光発電所を稼働させた。9年前に閉校した「区立三浦健康学園」の跡地を活用したプロジェクトで、リース方式によって初期投資がかからない事業スキームを採用した。
世田谷区(せたがやく)は東京都の中でも早くから公共施設に新電力を導入して電気料金を削減するなど、電力・エネルギー問題に先進的に取り組んでいる。再生可能エネルギーでは太陽光発電を中心に施策を展開していて、現在は区内の企業や家庭の屋根で発電する「世田谷ヤネルギー」を拡大中だ。
みずからでも太陽光発電事業に乗り出し、3月1日に「世田谷みうら太陽光発電所」の運転を開始した(図1)。場所は世田谷区から南へ55キロメートルも離れた神奈川県の三浦市にある。1964年から2005年まで「世田谷区立三浦健康学園」があった跡地を活用した。
この健康学園は日本の高度成長期に都会の空気汚染が進んだ影響によって、ぜんそくなどを患う子供たちが増えてしまったために、豊かな自然環境の中で学ばせることを目的に設立された。41年間に16万人以上の小学生が利用した後、世田谷区の環境が改善したことで廃校になり、その跡地に環境重視の方針で再生可能エネルギーによる発電所の建設を決めた。
8700メートルの敷地に420kW分の太陽光パネルを設置して、年間に44万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で約130世帯分の使用量に相当する。発電所の場所は東京湾に近い丘陵にあることから、建物が集中する世田谷区よりも太陽光発電に向いている。
世田谷区は発電所の建設費をかけないために、20年間のリース契約で設備を賃借する。全国各地で太陽光発電所を手がける国際ランド&ディベロップメントが建設と維持管理を請け負い、故障や事故のリスクもリースの中に含んでいる。売電収入とリース料の差額による世田谷区の収益は環境事業に生かすことにしている(図2)。
さらに地元の三浦市と協定を結んで、災害時には地域の非常用電源として利用できる体制も作った。太陽光発電の電力を外部に供給する役割を果たすパワーコンディショナーが2台あって、そのうちの1台(出力100kW)は自立運転機能を備えている。停電時にも運転を続けて、近隣の三浦市内に電力を供給することができる。
関連記事
- 電気料金を年間6650万円も削減、東京・世田谷区が新電力を拡大
対象施設を117か所から163か所へ - 駅ホームの空調に地中熱を利用、年間のコストを30%削減
小田急電鉄が東京都世田谷区の地下駅に導入 - 65年の歴史に幕を閉じた中学校、太陽光発電所として生まれ変わる
グラウンドに926kWの発電設備 - 学校の屋根を太陽光発電に貸出、神奈川県立の20校で1MW以上
最長25年間にわたって発電事業者に貸し出す - 太陽光発電が毎年2倍に増える、再エネ率20%へ小水力にも挑む
エネルギー列島2013年版(14)神奈川
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.