続々と25%の壁を超える太陽電池、シリコン新時代へ:自然エネルギー
シャープは2014年4月、シリコン系太陽電池の変換効率において25.1%を達成した。太陽電池の表面から電極を取り除くバックコンタクト技術と、2種類のシリコン層を重ねるヘテロジャンクション技術を利用した。
シリコンを使った太陽電池の技術開発が進んでいる。「2014年2月に24.9%を達成後、2014年4月には25.1%まで性能を高めた」(シャープ)*1)。
自然な太陽光の条件下で、シリコンだけを用いた太陽電池は長期間足踏み状態にあった。1999年3月にオーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)が達成した25.0%という記録を誰も超えることができなかったからだ。2014年4月10日にはパナソニックが新構造のHIT太陽電池において、25.6%という記録を発表しており、国内の複数のメーカーが相次いで「壁」を超えたことになる。
*1) 2014年4月20日に開催された産業技術総合研究所(AIST)の福島再生可能エネルギー研究所の開所記念国際シンポジウムで、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)副理事長の倉田健児氏が言及した数字。シャープと豊田工業大学は、NEDOの委託研究「低炭素社会実現のための極限シリコン結晶太陽電池の研究開発」プロジェクトに参加している。プロジェクトの目標は2015年にセル変換効率25%(15cm角)を達成することだ。
変換効率改善が著しいシャープ
シャープは単結晶シリコン太陽電池を改善することで、今回の成果に至った。2つの技術を組み合わせることによって達成した。
シャープは太陽電池の表面から電極を取り除き、裏面だけに配置するバックコンタクト構造を既に製品に採用している。入射光を遮る電極が無くなることで生み出す電流が増える。
もう1つの技術は複数のシリコン材料を組み合わせることだ。板状の単結晶シリコン層の表面にごく薄いアモルファスシリコン層を形成(ヘテロ接合)することで、光が生み出した電子とホールの対が消滅(再結合)することを防ぎ、出力電圧を高める。電流と電圧のそれぞれを大きくすることで、出力(電流×電圧)を向上させている。
同社がこのような手法を取り入れ、最初の成果を公開した時点(2012年12月)の変換効率は21.7%。これを1年半足らずで3.4ポイント高め、今回の25.1%にまで改善した。
シャープは今回の太陽電池セルの構造を公開していないものの、概要は2014年2月の構造と同じだ(図1、図2)。このときは1.9cm角のセルで24.9%という成果を得ている。
図1、図2は、「第7回国際太陽電池展(スマートエネルギーWeek2014)」(2014年2月26〜28日)において、シャープが展示した内容だ。
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