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CO2フリーの「アンモニア発電」を実用化へ、灯油と混焼して21kWの発電に成功自然エネルギー

アンモニアには水素が多く含まれていて、発電用の燃料に利用できる。政府が推進する研究開発プロジェクトの中で「アンモニア発電」の実用化が進められている。アンモニアを灯油と混焼できる実証装置を使って21kWの発電に成功した。今後はアンモニアだけを燃料にCO2フリーの発電を目指す。

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 CO2を排出しないクリーンエネルギーとして、水素(H2)の注目度が高まっている。ただし水素は沸点が低くて液化しにくいため、大量に輸送・貯蔵する方法に課題がある。そこで水素の含有量が多い「エネルギーキャリア(エネルギー貯蔵・輸送媒体)」の研究開発が進んでいる(図1)。エネルギーキャリアの有力な候補の1つがアンモニア(NH3)である。


図1 水素を補完する「エネルギーキャリア」の活用法。出典:文部科学省、経済産業省

 産業技術総合研究所(略称:産総研)は政府が推進するエネルギーキャリアの研究開発プロジェクトの委託を受けて、アンモニアを燃料に利用できる発電装置の開発に取り組んでいる。その第1段階としてアンモニアを灯油と混焼させた発電の実証に世界で初めて成功した。

 アンモニアは着火しにくいうえに燃焼速度が遅いことから、灯油70%・アンモニア30%の割合で混焼する方法をとった。発電装置はガスタービン方式で、気体のアンモニアと液体の灯油の2系統を燃料に利用できる燃焼器を備えている。燃焼によって生じる有害な窒素酸化物を除去するための脱硝装置も設置した(図2)。


図2 アンモニア直接燃焼マイクロガスタービン発電装置。出典:産業技術総合研究所、科学技術振興機構

 発電装置の最大出力は50kWだが、アンモニアと灯油の混焼発電は21kWの出力で実施した(図3)。最初は灯油だけを燃焼させてガスタービンを起動する。起動後に出力が安定してからアンモニアと窒素の混合ガスの供給を開始して、徐々に窒素を少なくしてアンモニアを増やしていく。アンモニアと灯油による混焼発電を続けても、21kWの出力を維持することができた。


図3 燃料供給量と発電出力の変化。出典:産業技術総合研究所、科学技術振興機構

 アンモニアは沸点がマイナス33度で、水素の沸点がマイナス252度であるのと比べて液化しやすい利点がある。しかも燃焼によって生じるのは主に窒素と水で、CO2などの炭素化合物を排出しない。灯油のような化石燃料と混焼させれば、火力発電に伴うCO2排出量を削減することができる。

 産総研は引き続きアンモニアの比率を高めた混焼発電に取り組むほか、天然ガスとアンモニアの混焼発電、さらにアンモニアだけを燃料にして専焼発電の実証実験も進める予定だ。アンモニア専焼発電を実用化できると、CO2フリーの発電方法になる。ただしアンモニアは刺激臭が強くて毒性もあるため、業務で取り扱うには届出が必要だ。

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