小型の「核融合」、本当に10年で実現できるのか?:自然エネルギー(2/2 ページ)
米Lockheed Martin(ロッキードマーチン)は、2014年10月15日、10年以内に小型の核融合炉を実用化できると発表した。1年間で設計やテストを完了し、5年以内にプロトタイプを試作する。もしも計画通りに実現すれば、60年にわたる核融合研究において、まさにブレークスルーとなる形だ。
7カ国(地域)が協力する大規模プロジェクト
方式によっては既に1国の経済力では開発が進まない状況に入っている。最新の国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」プロジェクトでは日本、米国、欧州連合、ロシア、中国、韓国、インドが協力し、フランス南部、マルセイユの内陸に位置するカダラシュに実験炉を立ち上げるほどだ(図2)。運転開始は2019年を予定する。
図2はITERの完成予想図。地下2階、地上3階の建物の内部に収まっている。5階分の高さは60m。
核融合出力50万kW(500MW)、エネルギー増幅率10(出力÷入力=10)をうたうものの、いわゆる発電所ではない。実験炉とあるように、内部の水素プラズマが臨界し、自己点火することを目指した設備だ。なお、ITER以降には原型炉(発電実証炉)が必要であるものの、詳細は決まっておらず、完成は21世紀中葉だという。最終的に核融合発電所が完成する時期も明確にはなっていない。21世紀中には実現できないのではないかという主張があるほどだ。
小型化についてはそもそも目標としていない。ITERでは核融合反応を起こすドーナツ型の「炉」を中心に据えている。炉の部分だけで直径は約30mあり、重量も2000トンを優に超える。全体の寸法は図2にあるようにさらに大きい*3)。
*3) ITERでは2億度という超高温の水素プラズマを一度に800m3扱うものの、水素プラズマの質量は合計しても約1gと少ない。プラズマが非常に希薄だ。太陽中心部の温度は1500万度と「低い」が、圧力は2500億気圧に達しているため、プラズマは水の150倍以上という高密度の状態にある。
研究進むレーザー核融合
現在の核融合炉の研究開発はITERに1本化されてはいない。さまざまな方式が各地の研究機関で試みられている。いずれもDT反応を利用する点では同じだ。
複数の方式を水素プラズマの閉じ込め手法によって分類すると、大きく2つに分かれる。1つは磁場閉じ込め方式だ。ITERはトカマクと呼ばれる構造を用いてプラズマを閉じ込める。
もう1つの方式は慣性閉じ込め方式だ。例えば、レーザー核融合である。多数のレーザーのエネルギーを1点に収束し、燃料を爆縮させて核融合反応を起こす。国内では大阪大学が、米国ではローレンス・リバモア国立研究所が研究を主導している。ローレンス・リバモア国立研究所の方式は、2014年2月に峠を1つ超えた。核融合によって生まれたエネルギーが、燃料のペレットに吸収されたレーザーのエネルギーを超えたからだ。ただし、レーザーの総エネルギーと比較すると下回っているため、発電所としてはまだ機能しない。
図3は実験に用いた燃料カプセルと格納用金属ケース(hohlraum)を示す。磁場閉じ込め型とは全く異なる課題があった。燃料カプセルは正確な位置を保つよう18K(−255度)という極低温に保たれている。
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