パワコン不要の太陽光、「交流」でつなぐ蓄電池:蓄電・発電機器(1/2 ページ)
日本国内では全くといってよいほど導入が進んでいない太陽光発電向けのマイクロインバーター技術。欧米では同技術の優位性が評価されており、パワーコンディショナーを追い込むほど導入数が増えている。同技術に特化した米企業が、蓄電池をも取り込むシステムを開発。採用された蓄電池は日本製だった。
太陽電池が生み出した直流電流をパワーコンディショナーで交流に変えて……。国内のシステムでは大前提となっているこのような仕組みを「ひっくり返す」システム技術が、欧米で浸透し始めている。
パワーコンディショナーは使わない。直流を交流に変換する20cm角程度の装置「マイクロインバーター」を太陽電池モジュールごとに接続し、太陽電池モジュールからその場で交流を取り出すという方式だ(図1)*1)。
従来のパワーコンディショナーを集中制御だと考えれば、マイクロインバーターは分散制御に相当する。
*1) パワーコンディショナーもマイクロインバーターも直流を交流に変換するという意味では同じ機能を備えている。パワーコンディショナーは複数の太陽電池モジュールを直列に接続したストリング単位で、得られる電力を最大化しようと動作することに対し、マイクロインバーターは1枚の太陽電池モジュールだけを最適化する。
図1のようなシステムにはどのような利点があるのだろうか。幾つもある。「もう少し電力が欲しい」という場合、太陽電池モジュールを1枚単位で増設できる。1枚だけ大出力のモジュールを追加することも可能だ。モジュールの特性を合わせる必要がないからだ。このため、パワーコンディショナーを用いた場合よりも、一般には得られる電力の量が多くなる。
太陽電池モジュールの故障や、影にも強い。故障したモジュール、影が当たったモジュールの出力だけが下がり、隣のモジュールは正常に動作し続ける。システム全体への影響が小さい。
設置工事も楽になる。もともと交流を通している宅内配線と接続しやすく、システム拡張がたやすい。マイクロインバーターにコンセントプラグが付いており、これを家庭用コンセントに差し込むだけで動作する製品もある。「プラグインソーラー」と呼ぶ。
設置スペースでも有利だ。パワーコンディショナーの専用スペースを用意する必要がないためだ。小ぶりな家屋ではありがたい。
ただし、マイクロインバーターにも「欠点」はある。太陽電池モジュールの数だけ装置を用意しなければならず、モジュールの枚数が多いと、パワーコンディショナーよりも割高になるのだ。しかし、次節で紹介するように米国市場では導入が進んでいる。これは初期コストとトータルの発電量を評価した結果だといえるだろう。
米国市場がマイクロインバーターで突出
米国の調査会社であるIHSが2013年8月に発表した資料によれば、マイクロインバーター市場は米国に集中しており、2012年には世界市場のうち、72%のシェアを占めたという。2013年には米国の住宅市場の40%がマイクロインバーターを採用しており、パワーコンディショナーが少数派に転落する可能性が高い。
2017年のマイクロインバーターの世界市場は2.1GWまで成長する見込みであるという。これは2013年の約500MWと比較すると4倍の成長に相当する。
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