2050年までのエネルギー技術開発、水素・宇宙太陽光・原子力など36分野で:自然エネルギー
政府はエネルギー関連の技術開発に関するロードマップを36分野にわたって策定した。エネルギーの生産・流通・消費の3段階をカバーする重要な技術を対象に、2050年までの課題や開発目標をまとめた。水素の重要性を強調したほか、宇宙太陽光発電と原子力発電のロードマップも加えた。
経済産業省は11月19日に開催した審議会で「エネルギー関係技術開発ロードマップ」の素案を提示した。36項目に及ぶ技術テーマに関して、2020年と2030年、さらに2050年までの開発目標をまとめたものだ(図1)。3カ月前の8月19日の時点で19項目のロードマップを公表していたが、新たに宇宙太陽光発電や原子力発電を追加した点が目を引く。
宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power System)は、宇宙空間で太陽光を受けて発電した電力を無線で地球まで伝送する。地球上と違って昼夜や天候の影響を受けずに安定した電力を供給できる利点があり、未来のエネルギー源として世界各国で研究開発が始まっている。
その中核技術の1つがマイクロ波による無線送受電技術である。長距離の無線送受電に必要な精密ビームの方向制御技術をはじめ、送受電の効率改善や送電部の小型・軽量化などが課題になる(図2)。
現時点ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心に地上の実証実験を2014年度中に開始する予定だ。さらに2020年代に衛星による実証実験を進めたうえで、2030年代にはMW(メガワット)級の発電ユニットを配備する(図3)。2050年までに宇宙太陽光発電システムを実用化できる期待は大きい。
夢のある技術開発が進む一方で、現実的な課題も山積している。原子力発電のロードマップには5つの難題が掲げられた(図4)。現在の主流である軽水炉による発電方式の安全性向上のほか、発電所の廃止措置(廃炉)や放射性廃棄物の処分に関する研究開発を推進する。このほかに必要性が問われている高速増殖炉「もんじゅ」の再稼働を含めて、核燃料サイクル計画を続けていく方針も改めてロードマップで示した。
水素エネルギーに関しては6月に示した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」と同じ内容で、「製造」「輸送・貯蔵」「利用」の3つのロードマップと「燃料電池自動車」のロードマップを取り入れた。再生可能エネルギーは熱利用を含めて8つのロードマップをもとに技術開発を進めていく。
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