農地に太陽光発電とイチジク栽培、追尾型システムで発電量は1.5倍:自然エネルギー
福島県いわき市の農地に追尾型の太陽光発電システムを設置して、イチジクの栽培と合わせて売電収入を得る試みが9月から始まっている。75基で約400kWの発電能力になり、200世帯分の電力を供給できる。隣接地に設置した固定型の太陽光パネルと比べて年間の発電量は1.5倍になる。
農作物を栽培しながら太陽光発電を実施する「ソーラーシェアリング」の取り組みが全国各地に広がってきた。福島県のいわき市でトマトやイチジクなどの生産・加工・販売を手がける「とまとランドいわき」は、2つの発電方式を組み合わせたメガソーラー級の太陽光発電設備を2014年9月に稼働させた(図1)。
温室に隣接した所有地には通常方式の太陽光パネルを固定して設置する一方、営農が条件になる農地には追尾型の太陽光発電システムを導入した。追尾型のシステムは太陽光パネルを支柱に設置した状態で、太陽の移動に合わせてパネルの向きを自動的に変えることができる。
このような追尾型を農地に導入するメリットは2つある。第1に太陽光パネルを設置する基礎部分の面積が小さくて済むため、周辺にも十分な太陽光が差し込んで農作物の栽培が可能になる。第2のメリットは太陽光パネルが朝から夕方まで垂直に太陽光を受けることができて、発電量が増加する。とまとランドいわきでは2012年7月に、メーカーのフジプレアムから7基の寄贈を受けて実証を進めてきた(図2)。
とまとランドいわきの太陽光発電設備は追尾型で413kW、固定型で558kWの発電能力があるが、年間の発電量は追尾型が71万kWhで固定型の64万kWを上回る。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を比較すると、追尾型は19.6%になり、固定型の13.1%の約1.5倍にもなる。
追尾型のシステムは1基あたり25枚(縦と横に5枚ずつ)の太陽光パネルで75kWの発電能力になる。設置場所の緯度と経度を設定することにより、太陽光の位置を計算しながらパネルの向きを変えていく。追尾に必要な電力は太陽光発電ではなくて通常の系統電力を利用するが、消費する電力量は発電量の1%以下で済む。
とまとランドいわきは2013年度に固定価格買取制度の認定を受けていて、発電した電力を1kWhあたり36円(税抜き)で売電する。年間の売電収入は4860万円を見込める。このうち固定型の発電設備は農林水産省の補助金を受けて設置したため、固定型による売電収入の5%を地元の福島県立磐城農業高校の実習環境の整備に還元することになっている(図3)。
追尾型の太陽光発電と合わせて栽培するイチジクは温室で苗木を育成した後に、発電システムのあいだに植える予定だ。農林水産省は営農に支障を与えないことを条件に、農地に支柱を立てて太陽光発電設備を設置することを認めている。
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