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水素ステーションのコスト低減策、「見えない条件」があった和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(9)(1/4 ページ)

水素ステーションの課題は幾つもある。今回は「建設」を焦点にコストダウンの手法を探った。総合エンジニアリング企業であり、水素ディスペンサーも手掛けるトキコテクノに、開発方針や今後のコスト低減策について聞いた。

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 水素ステーションの建設費用を議論するとき、圧縮機や蓄圧器、ディスペンサーなどの機器を真っ先に考えるだろう。実は建設自体の費用(エンジニアリング費用)もかなりの割合を占める。

 今回は、水素ステーションに関する総合エンジニアリング企業であるトキコテクノを訪れた。同社で新エネルギー部の部長を務める小笠原恒治氏と、新事業推進本部事業企画部の部長を務める与安光晴氏に水素ステーション建設について聞いた(図1)。同社は各種のディスペンサーも製造している。あわせて水素ディスペンサーの開発についてもインタビューした。


図1 トキコテクノの与安光晴氏(左)と小笠原恒治氏

最初期から自社内で開発を続ける

和田憲一郎氏(以下、和田氏) ディスペンサーの開発や水素ステーションに対する取り組みを教えて欲しい。

小笠原氏 当社は1992年から圧縮天然ガス(CNG)ディスペンサーの開発に着手し、1994年に初号機を納入した。それ以降、現在まで数多くのCNGディスペンサーを納入しており、シェアは約65%である。その後、LNGディスペンサーの開発にも着手した。一部トラックには採用されたものの、広がりを見せなかった経緯がある。

 その後、2001年には燃料電池車(FCV)用の水素ディスペンサーをある企業に研究用として納入した。3種類の圧力、20MPa、25MPa、35MPa(200気圧、250気圧、350気圧)で供給可能な装置だ(図2)。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業が2002年から始まり、70MPa用のディスペンサー開発に着手した。水素ステーションのシステム開発にかかわりだしたのは、2008年に東邦ガス向けにNEDOの委託事業として引き受けてからである。

 2006年には液体水素用のディスペンサーも開発した。ただし、FCVが立ち上がっておらず、液体水素の流通量が増えなかったため、2008年には中断した。(ディーゼルエンジン車用燃料として期待されていた)ジメチルエーテル(DME)ディスペンサーの開発にも着手したが、実証試験を終えた後、開発を中断した。


図2 水素ディスペンサーに至る開発の経緯(クリックで拡大) 出典:トキコテクノ

和田氏 ディスペンサー開発の経験が豊富なことは分かった。水素用ディスペンサーは自社で全て開発したのか。

小笠原氏 2001年から手探りで進めてきた。水素用ディスペンサーの部品は数多い。流量計や緊急離脱カップリング、充填カップリング、遮断弁、制御機器などがある(図3)。とにかくよく分からないので全部自社で開発を進めてきた。一部、遮断弁などは他社に開発を依頼したものの、全てを1回は自社開発することで、どの部分が重要なのか知見を得ることができた。2005年には、当社の静岡事業所(静岡県掛川市)に高圧水素充填試験設備を導入し、そこでディスペンサーのみならず、水素ステーションとして一連の試験ができるように整えた。


図3 70MPa級水素ディスペンサーの開発(クリックで拡大) 出典:トキコテクノ

和田氏 水素用ディスペンサーをこれまでどこに納入したのか。

小笠原氏 2002年の「JHFC横浜・大黒水素ステーション」(横浜市鶴見区)から始まって、最近の「JHFC横浜・旭水素ステーション」(横浜市旭区)まで8カ所に納入している。水素供給・利用技術研究組合(HySUT)の「神の倉水素ステーション」(名古屋市緑区)では70MPa用を、JHFC横浜・旭水素ステーションでは82MPa用を納入した。

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