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浄化センターが9600万円を生む、東海地方初の燃料電池導入自然エネルギー

下水の汚泥処理の際に発生する消化ガスを有効利用する事業を、岐阜県大垣市が開始する。消化ガスの主成分であるメタンを大型の燃料電池で電力に変え、その際に生じる高温水も利用する。東海地方の下水処理場では、初めての試みだという。2017年4月に設備の稼働を計画している。

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図1 岐阜県大垣市と浄化センターの位置

 岐阜県大垣市は、下水の汚泥処理の際に発生する消化ガスを有効利用する事業を開始する。消化ガスの主成分であるメタンを大型の燃料電池に通じて電力に変え、その際に生じる高温水も利用する。

 東海地方の下水処理場としては、バイオガス(消化ガス)と燃料電池を組み合わせた発電設備を導入する初の事例だという。

 約4万4700世帯の下水を処理する市内最大の「大垣市浄化センター」(大垣市築捨町)に、4億9800万円を投じて燃料電池設備などを2年間で設置し、年間約250万kWhの電力を得る計画だ(図1、図2)。


図2 設備の完成予想図 手前にある3基の設備を導入する(クリックで拡大) 出典:大垣市

固定価格買取制度で計画が大きく変わる

 大垣市は2012年2月、同浄化センターにバイオガス発電設備を導入する計画を発表。発電設備によって1年間に約200万kWhの電力を得て、この電力を直接センター内で利用するという計画だ。センターが消費する電力の約25%を賄うことができ、年間で2400万円の節電になると見積もった。

 2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)が、同市の計画を大きく変えた。FITを利用して20年間売電し、年間9600万円の売電収入を得ることができるからだ*1)。売電収入は浄化センターの維持管理費に充当する。

 今回の計画は、市が予算を投じて、市の設備を拡充する形を採る。2015年度が始まり次第、一般競争入札を公告し、建設事業者を決める。売電先もその際に選ぶ。2015年度に2億5500万円、2016年度に2億4300万円の事業費を投じ、2017年4月に設備の稼働と売電開始を計画している。

*1) 2014年度のメタン発酵ガス(バイオマス由来)の買取価格である1kWh当たり39円(税別)で計算。

富士電機の燃料電池を導入

 大垣市浄化センターで生じる消化ガスは約122万m3(2013年度)。「2013年度実績では消化ガスの68%を蒸気ボイラーに通じて消化槽の加熱に利用していたものの、32%が未利用(燃焼処分)となっていた」(大垣市水道部下水道課)。つまり、今回の計画によって未利用エネルギーが減り、環境負荷が低減する。二酸化炭素の削減効果は、スギ約9万7000本に相当する年間約1360トンだという。

 事業では年間114万m3の消化ガスを利用する計画だ。発注先は入札によって決まるものの、発電設備は決定済みだ。「出力105kWの富士電機の燃料電池を3基導入する」(同課)。


図3 消化ガス発電システムの構成 出典:大垣市

 燃料電池導入後のシステム構成を図3に示す。左から3基の燃料電池、熱交換器、六角形に描かれた消化タンク、ガスタンクだ。従来は消化タンクとガスタンクが主な設備だった。燃料電池はガスタンクから消化ガスの供給を受け、電力と赤い矢印で描かれた高温水を生み出す。高温水を熱交換器に通じ、消化タンクの汚泥を加温、細菌による有機物の分解を助ける。分解によって生じた消化ガスをガスタンクに蓄えるという仕組みだ。

 導入を予定する燃料電池は発電効率が40%あり、熱効率49%と合わせると総合効率は89%に達する。電力と熱の両方を利用するコージェネレーションシステムに適した装置だといえる。

 ただし、消化ガスの量(下水の量)は変動するため、常に最大出力で動作することは計画していない。燃料電池の利用率は計算上64%になる。「消化槽の加熱用にヒーター設備も導入する」(同課)。

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