太陽光発電で急成長したサニックス、業績不振で600人の希望退職者を募集:法制度・規制
2012年度から太陽光発電の事業を急拡大してきた環境衛生サービスのサニックスが600人にのぼる希望退職者の募集を開始する事態に陥った。太陽光発電の新規導入が難しくなった九州を中心に西日本の人員削減と店舗の統廃合に踏み切る。市場規模が大きい東日本で巻き返しを図る方針だ。
サニックスは1975年に長崎県の佐世保市で創業した環境衛生サービス会社で、企業や家庭を対象にした防虫工事などで業績を伸ばしてきた。グループ全体の社員数は2014年9月末時点で4420人にのぼり、東証1部に上場している。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まった2012年度(2013年3月期)から太陽光発電(SE:ソーラー・エンジニアリング)事業に注力した結果、2013年度には売上高が一気に2倍に拡大した(図1)。2014年度も当初は1615億円へ倍増を計画していたが、現状では計画値の6割程度にとどまる見込みだ。利益も黒字の予定から赤字に転落する。
図1 サニックスの業績の推移(2015年2月13日発表時点)。SE:ソーラー・エンジニアリング(太陽光発電製造・販売・施工)、HS:ホーム・サニテーション(戸建て住宅向け環境衛生サービス)、ES:エスタブリッシュメント・サニテーション(法人・事業主向け環境衛生サービス)。出典:サニックス
サニックスによると、太陽光発電事業の大半を占めていた西日本地区の売上低迷が最大の要因だ。2014年9月下旬に九州電力が再生可能エネルギーによる発電設備の接続を保留する措置を開始したのに続いて、四国電力も10月から接続保留に踏み切り、太陽光発電の新規開発が困難になった。
サニックスの太陽光発電(SE)事業部門は中部を含む西日本地区に65店舗があり、営業・技術を合わせて約2200人の人員を抱えている(図2)。業績の立て直しに向けて、九州を中心に20店舗を6月中に廃止する一方、約600人の希望退職者の募集を5月14日に開始する。
サニックスは2010年に中国に太陽電池モジュールの製造・販売会社を設立して以来、出力が1000kW(キロワット)未満の中小規模の産業用を主体に、太陽光発電システムの施工・保守までを含む一貫型のサービスを提供してきた(図3)。産業用と住宅用を合わせて2014年3月末までに35万kWを超える太陽光発電システムを設置している。
2014〜2016年度の中期経営計画「サンシャインプラン2016」では発電事業に加えて電力小売・卸売事業にも参入して、全社の売上高を3年間で4倍の3300億円に拡大する目標を掲げていた。従業員数も1.5倍の6000人強に増やす計画だったが、初年度の2014年度で大幅な見直しを迫られる結果になってしまった。今後は再生可能エネルギーの接続可能量が大きい東京・中部・関西の3地域に事業の軸足を移して巻き返しを図る。
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