薄さ1.5mmの「曲がる」太陽電池、新市場の創出に期待:太陽光
ソーラーフロンティアは薄さ1.5ミリメートルの曲がる太陽電池モジュールを開発し、シンガポールのビルに導入した。同社が以前から開発を進めてきたCIS薄膜太陽電池を利用したもので、太陽電池のこれまでにない活用方法を切り開く製品として期待される。
昭和シェル石油のグループ会社で、太陽電池の生産・販売を手掛けるソーラーフロンティアは、シンガポールのPSA Singapre Terminal社(以下、PSA)が新たに建設したターミナルビルに、「ベンダブル(曲がる)CIS薄膜太陽電池モジュール」(以下、ベンダブルモジュール)の試作品を設置した(図1)。
現在の太陽電池は結晶タイプのシリコンを使ったものが主流だが、各種の化合物を素材に利用した薄膜タイプの開発も進んでいる。ソーラーフロンティアは以前より、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を使ったCIS薄膜太陽電池の開発を進めてきた(関連記事)。
今回設置したベンダブルモジュールは、同社の研究開発施設である「厚木リサーチセンター」で開発を行った。従来の結晶シリコンタイプにはないCIS薄膜太陽電池の特性を活用すべく、太陽電池モジュールの構造を徹底して追求し新たな製造プロセスを開発したという。
具体的には標準的な従来モジュールで使用されているガラス基板の代わりに、薄い金属基板を使用し、ガラス製カバーを高機能樹脂フィルムに置き換えた。さらにフレームを取り除くことで、モジュール重量が現行製品比で約3分の1以下、厚さ約1.5ミリメートルという超薄型のモジュールを実現した。
この薄型かつ軽量なベンダブル・モジュールは曲げられるため、さまざまなモノと一体化させることが可能だ。従来の太陽電池モジュールでは難しかった場所にも設置できるようになれば、太陽電池市場の拡大が期待できる。ソーラーフロンティアは、今後もこうした新たな市場開拓の可能性を持つ製品の開発に取り組むとしている。
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