発電所の新設計画が10年間で1520万kW、火力が97%を占める:電力供給サービス
電力会社を中心に今後10年間で運転開始を予定している発電所は合計で1520万kWにのぼることが明らかになった。そのうち97%を火力が占めていて、国を挙げて取り組むCO2排出量の削減に影響を与えかねない状況だ。このほかに原子力発電所の新設分が7カ所で1018万kWも見込まれている。
4月に業務を開始した「電力広域的運営推進機関」が全国の電気事業者による今後10年間の供給計画をとりまとめた。2014年度末の時点で各事業者が保有する発電設備の最大出力を合計すると、2億5767万kW(キロワット)に達する(図1)。原子力を除外しても2億kWを超えている。
これに対して2015年8月に見込まれる最大需要は3日間の平均で1億5884万kWである。原子力を除く発電設備が平均75%の利用率で稼働した状態と同じだ。実際の需要は想定よりも低くなる見通しで、今夏も全国的には需給状況に余裕がある。
電力会社は10年後の2024年度の夏には1億7045万kWの最大需要を予想している。10年間にわたって年率0.8%で最大需要が増え続ける想定だが、これも実際には下回る可能性が大きい。ところが今後10年間に各事業者が運転開始を予定している発電設備は1520万kWもある(図2)。
このうち1471万kWが火力で、LNG(液化天然ガス)が全体の6割以上、石炭が3割以上を占めている(図3)。一方で廃止予定の火力発電所は507万kWにとどまる。2030年に向けてCO2排出量を26%削減することが国の目標になっていることから、目標を達成するためには運転中の火力発電所を含めて総量を規制しなくてはならない。
電力広域的運営推進機関は2015年度から全国レベルの需給調整を担うようになった。各事業者の供給計画を集約したうえで、月次・週次・日次の需給予測を立てることが重要な役割だ。ただし初年度の2015年度は電力会社などが原子力を理由に供給力を「未定」として報告したために、需給予測を立てられない状況にある。
10年間の長期計画の点でも、建設中と着工準備中の原子力発電所が全国に7カ所あるが、いずれも運転開始日が未定だ(図4)。原子力発電所の新設に関しては政府の方針も不明確で、中途半端な状態が続いている。2030年のエネルギーミックス(電源構成)の目標値を決めた以上は、早く明確な方針を示す必要がある。
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