低温排熱を利用可能、工場省エネ化を一段と進める蒸気発生ヒートポンプ:省エネ機器
富士電機は低温排熱の再利用することで、燃料費や二酸化炭素排出量を低減し、工場の省エネルギー化に貢献する「蒸気発生ヒートポンプ」を2015年12月に発売する。
工場など生産現場では電力事情の変化を踏まえ、エネルギーを効率的に使用することが求められている。その1つとして工場内で発生する低温排熱の再利用が注目されている。特に、食品・飲料、自動車、化学工業、パルプ・紙・紙加工品などの産業分野では熱の利用範囲が広く、また、再利用可能な排熱量が多く見込まれているという。
富士電機では今回、自動販売機で培ってきたヒートポンプ技術を活用し、工場内で生じたの低温排熱を回収・加熱して再利用する装置を開発した(図1)。排熱を有効活用し、それを工場全体のエネルギー管理と連携させることで省エネ・環境保全への貢献を目指す。
新製品は工場で排出される排温水(60〜80度)などから熱を回収し、100〜120度の飽和蒸気を供給する。幅1000×高さ1830×奥行き1000ミリメートルのコンパクト設計により、工場内で蒸気加熱を要する給水余熱や洗浄、殺菌、空調・加湿設備など、さまざまな工程の近辺に設置して利用できる。そのために配管の延伸に伴う放熱ロスも抑制可能だ。さらに最高クラスとなるCOP(エネルギー消費効率)3.5を達成したことで、エネルギーコストやCO2排出量を大幅に削減する。
蒸気の使用量に応じ、最大10台まで複数台での接続運転ができる。また、ネットワークに接続して中央制御室やPCなどからの遠隔監視・操作に対応。今後、同社のクラウドシステムと連携して、工場全体のFEMS(工場エネルギーマネジメントシステム)などと連携したエネルギー最適化に貢献する。低圧冷媒の使用により高圧ガス保安法の対象外のため、届け出や保安専任者の選出など法令に沿った手続きが不要だ。据え付けの際の特殊な工事なども必要ない(図2)。
食料・飲料、自動車、一般機械、化学工業、パルプ・紙・紙加工品など排熱が発生する製造業の工事設備に適している。最大加熱能力は30kW(キロワット)。最大蒸気発生量は45キログラム/時。2015〜2018年度までの累計で40億円の売上高を目標にしている。
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