下水道インフラの課題解決へ、クボタと東芝が省エネ技術を共同開発:省エネ機器
老朽化した下水処理場の改築更新や下水道未普及地域の解消など、国内の下水道事業が抱える課題を解決する技術として期待されているのが、膜分離活性汚泥法による下水処理だ。しかし同システムの普及には省電力性能の向上が課題となっている。そこでクボタと東芝は共同で、同システムの電力使用量を従来比50%削減する技術開発を目指す。
クボタと東芝は、微生物処理と膜による固液分離処理を組み合わせた水処理方法であるMBR(膜分離活性汚泥法)下水処理システムの省エネルギー化技術を共同開発することに合意した。今後、従来システムと比較して電力使用量を50%削減できる技術の開発を目指す方針だ。
MBR下水処理システムは、従来の処理施設に比べ省スペース化が可能で、安全性の高い処理水質を確保することができる。そのため、老朽化した下水処理場の改築更新や高度処理化、処理水の再利用化や下水道未普及地域の解消など、国内下水道事業が抱える課題の解決に貢献できる技術であり、水ビジネスの国際展開においても注目されている(図1)。
同下水処理システムはこれまで、国内下水市場では主に小規模な新設処理場において導入されてきた。しかし今後、中大規模処理場への普及拡大を図るためには電力使用量の削減が求められる。そこでクボタが持つ膜ユニットを中心とするハードウェア技術と、東芝が持つプロセス制御を中心とするソフトウェア技術を組み合わせ、1立法メートルあたりの電力使用量0.22kWh(キロワット時)を達成する技術の共同開発を行うことを決めた。
国土交通省の日本版次世代MBR技術展開プロジェクトにおける電力使用量の通年平均値は1立法メートル当たり0.47kWh(処理能力:5000立方メートル/日、流入率:80〜100%)であることから、今回の技術開発が成功すれば電力使用量を約半分にできる見込みだ。
MBR下水処理システムでは、膜分離装置や反応タンクに空気を供給する送風機の電力使用量が水処理施設全体の9割以上を占めている。今回の共同開発では個々の下水処理場で異なる運転状況に応じて供給空気量を最適化する制御技術を確立し、これを高性能膜分離装置と組み合わせることで電力使用量の削減を目指す。
この共同開発により東芝とクボタは、閉鎖性水域の富栄養化防止や環境基準達成のため、高度処理の導入が検討される下水処理施設を対象にMBR下水処理システムの普及拡大を図る方針だ。
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