凍害による年間200回の停電被害、太陽光と蓄電池で回避する実証を開始:蓄電・発電機器
カナダのオンタリオ州にあるオシャワ市は、凍害の影響で年間200回を超える停電に悩まされている。安定的な電力供給の実現と再生可能エネルギーの導入拡大に向け、NEDOは同市のオシャワ電力と共同で太陽光パネルと蓄電池を活用したスマートコミュティ実証を開始する。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)はカナダ・オシャワ市のオシャワ電力(OPUC)と共同で、スマートコミュニティ実証実験の実施に合意し、このほど基本協定書(MOU)を締結した。この事業では2015年度から2年間、同市内の家庭に太陽光パネルと蓄電池を同時に制御できるハイブリッドインバーターを設置し、停電時の非常用電源として活用や系統安定化の検証を行う。さらに世界の各地域への展開を狙ったビジネスモデルについても検証する。
オシャワ市では、厳しい寒さによる凍害の影響で年間200回を超える停電が発生しており、安定的な電力供給が大きな課題となっている。また同市が位置するオンタリオ州は、2009年に北米で初めてFIT(固定価格買取制度)を導入した地域であり、今後さらに20TWh(テラワット時)の原子力エネルギーを再生可能エネルギーに置き換える方針を示すなど、再生可能エネルギー導入拡大に注力している州である。
こうした中でNEDOは、オシャワ市、OPUCとスマートコミュニティ実証事業の協力に合意。同市の抱える課題や、オンタリオ州の方針に合致したソリューションとして、太陽光パネルと蓄電池を備えたハイブリッドインバーターシステムを個々の需要家に設置する(図1)。
具体的には2015年度から2年間、田淵電器を委託先として、同市内の30戸の家庭に同インバータシステムを設置し、停電時における非常用電源としての有用性検証および系統安定化を検証する。同インバーターシステムは1つの蓄電インバーターで太陽電池と蓄電池の両方を制御でき、逆潮流も防ぐ制御機能も備えている。
この事業で今後、深夜電力を蓄電池に充電し、日中に放電利用するピークシフトが期待できる。また、個々に設置するシステムは需要家の所有物ではなく、電力会社のネットワークの一部として電力会社が一括購入し、市場に参入していくビジネスモデルについても併せて検証を行い、世界の他の寒冷地や電力不安定地域への展開を目指すとしている。
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