ハウステンボスに再生可能エネルギー、「変なホテル」で水素も製造へ:自然エネルギー
長崎県の佐世保市にあるテーマパークの「ハウステンボス」で再生可能エネルギーを導入する取り組みが進んできた。テーマパークに隣接する別荘地に太陽光と風力のハイブリッド発電システムを設置したほか、建設中のホテルに自立型の水素エネルギー供給システムを導入する計画だ。
九州で人気のテーマパーク「ハウステンボス」の隣には、運河に囲まれた別荘地の「ワッセナー」が広がっている。オランダ風の戸建住宅129戸とマンション120戸が建ち並び、管理センターの屋根の上には大きな風車が付いている。この管理センターで使用する電力を太陽光と風力のハイブリッド発電システムで自給自足する実験が7月27日に始まった(図1)。
電力会社の送配電ネットワークから独立したオフグリッド型のシステムで、最大20kW(キロワット)の電力を供給することができる。太陽光パネルが合計で30kW、小型の風力発電機が2基で10kWの発電能力がある(図2)。太陽光と風力で発電した電力は鉛蓄電池に貯めることができる。蓄電容量は120kWh(キロワット時)で、一般家庭の使用量(1日あたり10kWh)に換算して12世帯分になる。
このハイブリッド発電システムはハウステンボスの施設を維持管理するハウステンボス・技術センターが九電工と共同で開発・運営する。両社は2020年まで5年間にわたって活用実験を続けながら、再生可能エネルギーによるオフグリッド型システムの有効性を検証する予定だ。九電工はインドネシアでも同様の実証実験を計画している。
ハウステンボスでは2013年に駐車場の跡地にメガソーラーを建設するなど、所有する土地や施設で再生可能エネルギーを拡大中だ。先ごろ7月17日に開業して話題を集めた「変なホテル」では、水素エネルギーを活用する計画がある。2016年の春に開業予定の第二期棟に、太陽光発電で作った電力から水素を製造して電力と熱を供給するシステムを導入する予定だ(図3)。
計画では水素製造装置と水素タンクを敷地内に設置して、燃料電池で電力と温水を作り出す(図4)。太陽光発電の電力を利用するため、CO2フリーのエネルギー供給システムになる。さらにリチウムイオン蓄電池を併設して、災害時などに停電が発生してもホテルの客室に電力と温水の供給を続けられるようにする考えだ。
変なホテルはハウステンボスが推進する「スマートホテルプロジェクト」で、低コストを目指してサービス用のロボットを活用するほか、最先端の省エネルギーシステムを導入することが基本コンセプトになっている。快適さも追求して、空調システムは送風式ではなく熱を伝える輻射(ふくしゃ)式を採用する。
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