世界最高クラスの発電効率を実現したガスエンジンが誕生:蓄電・発電機器
NEDOのプロジェクトで世界最高レベルの高発電効率と高負荷変動追従性を実現したガスエンジン発電システムが開発された。
三井造船はNEDOプロジェクトにより、従来の中速ガスエンジン発電システムよりも発電効率を1割高めたことに加え、2倍以上の負荷変動への追従性を両立する発電出力3MW(メガワット)級のガスエンジン発電システムの開発に成功した。
今回開発したシステムでは、ガスエンジン単体の改良により、発電・コージェネレーション向け3MW級ガスエンジンとしては世界最高レベルとなる47.8%(低位発熱量基準)の高い発電効率を実現。さらにガスエンジンに過給機余剰動力回収システム(THS)、低温廃熱回収システム(VPC)を付加した発電システムとして、発電効率1割向上となる50.6%を達成している。
国内では東日本大震災以降、電力セキュリティ確保や分散型電源の重要性が高まっており、国や自治体の施設でもコージェネレーションシステムの導入が進みつつある。海外でも北米でのガス価格の低下やアジア地域の消費拡大による分散型電源設備導入の推進により、ガスエンジン市場は大幅に拡大することが予想されている。
同社は2014年12月からプロトタイプ機による発電システムの実環境運転を開始。今回の取り組みでは、燃焼室仕様の見直しによる未燃焼ガスの低減、摺動部品仕様の見直しによるメカロス低減、クランクケース内オイルミストガス再循環による未燃料ガスの回収などにより、3MW級中速ガスエンジン(6MD36G単体)の発電効率を従来比3.88%向上するなどガスエンジンの効率化を図った。
同時に過給機回転軸に接続した油圧ポンプにより油圧を発生させ、エンジンクランク軸端に接続した油圧モーターを通じてクランク軸を加勢する過給機余剰動力を回収するシステムにより、発電効率を従来比で3.81%高めた。また、負荷変動率にはクランク軸側動力により過給機回転軸を加勢し、過給機の追従性を改善。それにより負荷の変動への対応が必要な場合にも安定した運転状態を確保できる能力である負荷変動追従性を向上した。今回の実証実験では0→100%の負荷到達を2.5分以内(従来は 6分程度必要)で達成している。
この他、ガスエンジンのジャケット冷却水および排気ガスの廃熱を、熱媒体を用いて電力として回収することにより、ガスエンジン発電システムとしての発電効率を高めている(発電出力2.91%増大)。
三井造船では開発した発電システムをモデル設備として運用し、省エネルギー効果などを検証していく予定。さらに3〜5MW級の出力範囲で順次ラインアップを充実しシリーズ化を行う方針だ。これにより分散型電源や常用自家発電・コ―ジェネレーション、各種災害に備えた非常・緊急対応電源など広いニーズに対応していく。
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