走れば充電できる道路、英国で2015年末から実証開始:電気自動車
英国は、ワイヤレス給電により、電気自動車やハイブリッド車などに“走るだけ”で電力を給電するための道路の実現に向け、実証実験を開始する。
低排出ガス自動車として有望視されている電気自動車(EV)だが、普及を阻む課題として残されているのが、充電インフラの設置拡大や走行可能距離、そして充電時間の問題だ。
これらの中で、充電インフラについては設置数の拡大が進んでいる状態で、走行可能距離についても距離の伸長は続いており、問題は解決しつつある。一方、最後まで課題として残りそうなのが充電時間の問題だ。急速充電器などが徐々に登場しつつあるものの、電池の構造的に現在のガソリン自動車のような短時間の充電を実現するには、多くの技術革新が必要となり、長い期間がかかる見込みだ。
EVを利用して出掛けた先で充電が必要となり、数十分も充電のためだけに待つ、というのは人々にとって大きなストレスとなる。また、ガソリン自動車に比べて利便性を低下させることになり、製品としての魅力を大きく損なっている。
「走行しながら充電する」という新発想
こうした課題を逆転の発想で解決しようとしているのが、英国だ。英国政府は2015年8月11日(現地時間)、高速道路や道路でEVなどに対して停止することなく給電できるシステムの実証実験を行うと発表した。
これは「充電により長く“停止する”ということがストレスであるならば、走行中に充電できるようにしてしまえばよい」という発想のものだ。実証試験では、停止して充電させることなく、EVが長い距離を安全に走行できるように、必要な仕組みや技術を検証していくという。
英国の交通大臣であるアンドリュー・ジョーンズ(Andrew Jones)氏は「動きながら充電できるという可能性は、低排出ガス自動車に大きな可能性をもたらす。英国政府ではこの技術の実証に5年間で5億ポンド(約1000億円)を用意する。これらの取り組みにより、家庭や企業が低排出ガス自動車を導入しやすくする」と述べている。
実験は準備が整い次第、2015年末ごろまでに開始する計画。試験は約18カ月継続し、その結果を受けて、一般道における試験に移行する。試験では高速道路を完全に複製し必要なワイヤレス技術や電気自動車などを調達するために最適な事業者を応募する。事業者が全て決まった時に、試験計画の詳細を公表するとしている。
走行中にワイヤレス給電を利用して充電する電気自動車システムは、既に韓国では一部実用化されており、注目を集めている。
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