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風車を横に倒して海上を運べる、浮体式の洋上風力発電に特許自然エネルギー

将来に有望な再生可能エネルギーの1つが洋上風力発電だ。日本の近海では浮体式の発電設備が増えていく見通しだが、全長が100メートルを超えるような設備を沖合まで運ぶのは大変な作業になる。風車を横に倒した状態で海上を曳航できる新タイプの構造物と設置工法を造船会社が開発した。

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 洋上風力発電に利用できるユニークな構造物と設置工法を開発したのは、大阪市に本社を置く創業104年のサノヤス造船である。風車を設置するタワー型の構造物の内部に複数のバラストタンクを配置して、タンク内の流体を移動させてタワーを垂直に立てる設置工法を開発した(図1)。


図1 タワー型の水上構造物を横に倒した状態から直立させる工法。出典:サノヤス造船

 大型の風力発電設備は全長が100メートルを超えることも多く、設置する海域まで船で曳航するためには十分な水深を確保できることが条件になる(図2)。製造工場から運ぶ途中に橋などの障害物がある場合には、設置海域に近い場所で発電設備を組み立ててから曳航する必要がある。


図2 長崎・五島沖で運転中の洋上風力発電設備のサイズ。出典:環境省

 サノヤス造船が開発したタワー型の構造物を使うと、風車や発電機を設置した状態で横倒しにして曳航することが可能になる。設置する海域でバラストタンク内の流体を移動してタワーを直立させることができるために、垂直の状態でタワーを曳航する場合に必要な大型クレーン(起重機)船を使わずに済む(図3)。構造物の形状はタワー型に限られるが、洋上に発電設備を設置する期間とコストを大幅に削減できる見込みだ。


図3 福島沖に曳航中の浮体式による超大型風力発電設備(上)、曳航方法(下)。出典:福島洋上風力コンソーシアム

 サノヤス造船は2014年1月に特許を出願して、2015年4月に認定を受けたことを8月25日に公表した。これから拡大が見込める浮体式の洋上風力発電の市場で知的財産を活用した事業を展開していく。

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