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灰色・半透明の太陽電池、ビル壁面で効率5%超蓄電・発電機器(1/2 ページ)

ビルのゼロエネルギー化(ZEB)。遠い未来の話ではない。欧州では2018年末にまず官公庁の関連ビルで、広義のZEB(NZEB)を実現しなければならない。ビル自体がエネルギーを生み出す手法が役立つ。ビルの外観デザインに合う建材一体型の太陽電池、灰色で半透明な有機薄膜太陽電池をメルクが市場投入した。

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 メルクは2015年12月10日、有機薄膜太陽電池(OPV)モジュールの提供を開始したと発表した。ドイツMerckとドイツBELECTRIC OPVが共同で開発した同モジュールには、2つの特徴がある*1)

 1つは、1平方メートル当たり50ワット以上の発電が可能なこと。変換効率に換算すると、5%を上回ることになる。5%という数字は低くない。なぜなら半透明だからだ(図1、図2)*2)。例えば窓としての働きを持たせたり、デザインの余地を残すために太陽光の一部をしか発電に利用していない。これは、Merckが組成を新たにした材料「lisicon」によって実現したという*3)

*1) 「発電層などの主要な材料提供はメルク、モジュール製造はBELECTRIC OPV」(メルク)が担当した。
*2) 半透明化を実現するために「電極の金属が薄く、有機物の材料を薄く塗布した」(同社)。
*3) メルクは印刷エレクトロニクス用の各種材料(機能性インク)を総称して「lisicon」と呼んでいる。今回のlisiconは「p型半導体(有機薄膜太陽電池用ドナー材料)とn型半導体(有機薄膜太陽電池用アクセプター材料)のミクスチャーで、インクでの供給」(同社)だという。今回の材料の名称は「lisicon PV-Fシリーズ」。


図1 半透明有機薄膜太陽電池を通した風景 出典:Merck

図2 太陽電池自体に目の焦点を合わせると細かい電極が見える 出典:Merck

 米シカゴ市で開催されたAdaptive Architectures and Smart Materials Conference(2015年10月1日〜2日)で公開したもの。図1、図2とも上が新開発のモジュール、下が従来品だ。

建築担当者の意見を重視

 もう1つの特徴は色味が灰色であること。発表資料によれば、意図的に灰色を選んでいる。「多くの建築担当者から、グレーという色彩のOPVがあれば建材一体型OPVの採用が大きく拡大するであろうことを学んだため、ミラノ万博でのOPVの展示後、グレーのOPVを開発するという意欲的な目標を設定」したという。これは同社の先端技術事業統括責任者のブライアン・ダニエルズ氏の言葉だ。

 今回開発した有機薄膜太陽電池モジュールは、建物の建材と一体化したBIPV(Building-Integrated PhotoVoltaics)としての用途を狙う。メガソーラーなどとは異なり、BIPV用途では建物の外観と合った色味やデザインが要求される。

 ダニエルズ氏の言うミラノ万博とは、2015年3月から10月まで、イタリアのミラノ市で開催された「2015年ミラノ国際博覧会」のことだ。

 会場内に立ち上げたドイツパビリオンでは、BELECTRIC OPVが半透明有機薄膜太陽電池モジュール(図3)を提供した。6角形の形状を採る。このモジュールを樹木型の構造物「Solartree」に取り付け、電力を得ると同時に、夏季には日陰を提供したという(図4)。BIPVとしての用途を見せたことになる。


図3 半透明有機薄膜太陽電池モジュール 出典:ドイツBELECTRIC OPV

図4 ドイツパビリオンで展示された「Solartree」 出典:German Pavilion Expo Milano 2015/B.Handke

 ミラノ万博に参加した建築家の意見を取り入れ、国際博覧会の会期中に灰色の色味を実現する有機薄膜太陽電池の材料を開発、即座に製品化した形だ。

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