東京電力が大失態、スマートメーターの設置に大幅な遅れ:電力供給サービス(2/2 ページ)
小売全面自由化を前に東京電力が混乱をきたしている。2月と3月に合計93万台のスマートメーターを設置する計画だったが、最新の見通しでは75万台しか設置できない。工事会社と契約の未締結や作業員の離散が原因だという。小売電気事業者に対して契約変更を遅らせるよう異例の依頼を出した。
4月1日に間に合わないケースが多発する
実はスマートメーターの設置が大幅に遅れた背景に、東京電力のずさんな工事管理があった。経済産業省に報告した内容を見ると、あきれるばかりだ。
第1に管内45カ所の支社のうち10支社で、工事を依頼した会社が協力会社とのあいだで契約を結んでいなかった。そのために作業員の不足が発生した。第2に残り35カ所の支社でも、工事会社の作業員が大量に離散する事態を招いていた。
45支社全体では、2015年12月末の時点で650人の作業員を確保したはずだった。しかし契約の未締結で90人が減少したうえに、作業員の離散や他の工事との兼務などで2月末までに251人が減少した。結局のところ341人の作業員が不足して、予定の半分も確保できなかったことになる。
東京電力は緊急にバックアップの工事会社と新たに契約を締結するなどして作業員を増やして、3月以降の設置工事を進める方針だ。それでも計画の遅れを完全に取り戻す状態にはならない。
3月2日時点の最新の見通しでは、3月のスマートメーターの設置台数は1週間前の2月26日時点の予定よりも7万台少なくなる(図4)。当面の契約変更分の工事を優先するために、メーターの有効期間が失効した家庭の切り替えを遅らせるためだ。4月と5月にも合計9万台が減少する。
3月に設置する予定のスマートメーターのうち、契約変更に伴うものは23万台を見込んでいる。2月までに完了した2万台と合わせても25万台にとどまる。一方で、契約変更の申込数は2月末時点で20万件を超えているため、3月末にはスマートメーターの設置予定数をはるかに上回る申し込みが集まることは確実だ。
そこで東京電力は小売電気事業者に対して、通常の商習慣では考えられないような依頼を出した。契約変更の時期を4月の検針日に合わせてほしいという内容だ(図5)。検針日までは従来通り東京電力の契約を続けて電気料金を計算して、それまでにスマートメーターの設置を完了して小売電気事業者に引き継ぐ考えだ。
これにより東京電力は面倒な料金計算の手間を省くことができる。というのも、スマートメーターを設置する前に契約変更の手続きが完了した場合には、設置前の電気料金を日割り計算する必要があるからだ。とはいえ小売全面自由化の趣旨に反する行為であることは間違いない。
東京電力の4月の検針日は地区によって分かれていて、最も早い地区で4月4日(月)、最も遅い地区では4月28日(木)になる。もし検針日に合わせて契約変更日を遅らせると、ほぼ1カ月分は東京電力の電気料金が適用される。利用者と小売電気事業者の双方にとって簡単に受け入れられる話ではない。
そもそもずさんな工事管理が原因でスマートメーターの設置が遅れたわけで、本来ならば小売電気事業者との料金差を東京電力が補てんしてしかるべきだ。一般の民間会社と同じ感覚で業務を遂行できなければ、自由な競争状態の中で勝ち抜くのはむずかしい。
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