病院で命を守るUPS、1つに集めるだけで電力2割削減:省エネ機器
富士通エフサスは、富士通と共同で愛知県厚生農業協同組合連合会江南厚生病院(愛知県江南市)に設置したUPSを集約し、消費電力を約2割削減した。
医療機関では電子カルテシステムをはじめ、画像システムや医事会計システム、薬剤に関するデータベースなど、ICT(情報通信技術)システムの導入が増加傾向にある。さらに、これらは人命に関わるものであることから、最高レベルの信頼性が求められている。そのため、多くは、瞬停・瞬断を始めとする電源トラブルに備え、システムごとにUPS(無停電電源装置)を設置するケースが一般的になっている。
一般に停電や電源トラブルに備えて導入するUPSは、サーバごとに導入されることが多く、それぞれが余裕を加味した容量を必要とするため、各UPSが余剰容量を持ち、消費電力、物理的な設置スペースの増大につながるケースが見られていた。
江南厚生病院でもシステムやネットワーク機器ごとに小型UPSを設置していた。しかし、消費電力、運用管理は大きな課題だった。さらに、バッテリー交換やUPS本体の入れ替えタイミングが統一できず、そのたびに、一時的なシステム停止を検討する必要があり、救命救急、高度・専門医療を担っているため、長時間の停止が難しいという状況となっていた。
今回、同病院は電子カルテをはじめとした大規模なシステム更改を実施。それに伴いUPSの入れ替えが必要となり、富士通エフサスでは「FUJITSU Sustainability Solution エフサスグリーンファシリティソリューション」の適用を推進。これらの課題を解決するため、新たにパートナー契約を締結したシュナイダーエレクトリックのモジュール型冗長方式UPS「Symmetra PX」1台に、従来の69台分のUPS機能を集約する統合運用を提案し採用された(図1)。
この集約により消費電力を約2割減らすとともに、台数が減ることで、バッテリー交換・保守費用も削減でき、大幅なコスト削減を実現することに成功した。さらに、従来は、小型UPSの運用状況を確認するために、担当者が設置場所まで行き、1台1台を確認する必要があったが、集約することでリアルタイムかつ一元的な管理が可能になった。また担当者は、それぞれのUPSの導入時期が異なっていたことから、バッテリー交換、機器交換のタイミングを意識しなくてはならなかったが、その必要もなくなるなど、業務効率を大きく高めることができたとしている。
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