1基で800億円の経済効果、福島に世界最新鋭の石炭火力を建設:蓄電・発電機器
東京電力ホールディングスと三菱商事パワーなどは、福島県内2カ所に設置予定の石炭ガス化複合発電(IGCC)式発電所の建設、運営を担う新会社2社を設立した。総事業費は3000億円で、建設に伴い1日最大2000人規模の雇用を創出し、発電所1基当たり800億円の経済波及効果を見込んでいる。
三菱商事の100%子会社である三菱商事パワー、三菱重工業、三菱電機、東京電力ホールディングスおよび常磐共同火力の5社は、「世界最新鋭の石炭火力発電所プロジェクト」における発電所の建設・運営を実施する事業会社「勿来 (なこそ) IGCCパワー合同会社」(福島県いわき市)と「広野IGCCパワー合同会社」(同県広野町)をこのほど設立した。事業会社2社は東京電力ホールディングスと常磐共同火力がこれまで実施してきた同プロジェクトの環境影響評価を承継している。
同プロジェクトにおける両地点の総事業費は3000億円を超える規模となる。調達5社による出資と国内最大級のプロジェクトファイナンスによって行い、福島復興という目的に賛同した三菱東京UFJ銀行、日本政策投資銀行、みずほ銀行、三井住友銀行に加え、地元福島県の東邦銀行をはじめとした多くの金融機関が協力、支援する。
5社は2015年8月19日に福島復興に向けた世界最新鋭の石炭火力発電所プロジェクトの推進に関する基本合意書を締結し、2020年代初頭の運転開始に向けた詳細検討を進めてきた。これらを経て、今回事業会社を設立し、資金調達、環境影響評価の承継など事業を開始する体制が全て整ったことになる。
今後、勿来IGCCパワー合同会社は、常磐共同火力の勿来発電所(いわき市)の隣接地に。広野IGCCパワー合同会社は、東京電力フュエル&パワーの広野火力発電所(広野町)に、次世代のクリーンコールテクノロジーである石炭ガス化複合発電(IGCC)による定格出力54万kWのプラントをそれぞれ1基ずつ建設・運用する計画だ(図1・2)。運転開始時期はそれぞれ2020年9月、2021年9月を予定している。
IGCCは石炭をガス化し、コンバインドサイクル(ガスタービンと蒸気タービンの組み合わせ)で発電する方式。規模の従来型石炭発電方式(超々臨界圧)よりも熱効率48%と高効率であり、約15%の二酸化炭素排出量を削減できる。
なお、建設最盛期には両地点を合わせて1日あたり最大2000人規模の雇用を創出する。また、環境影響評価着手から運用を含めた数十年間で、福島県内に1基あたり総額800億円の経済波及効果と試算するなど、地元の経済の活性化に大きく貢献する見通しだ。
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