太陽電池の出荷に回復の兆し、第2四半期は前年比94%、発電事業用は110%:蓄電・発電機器
2015年度に入ってから太陽電池モジュールの出荷量が前年を下回っていたが、直近の2016年度の第2四半期は回復の兆しが見られる。国内の出荷量は前年比94%の166万kWに達した。このうち5割以上を占める発電事業用が前年比110%と伸びて、第1四半期から1.5倍以上に拡大している。
国内・海外の太陽電池メーカーなどが加盟する太陽光発電協会の集計によると、2016年度の第2四半期(7-9月)に国内で出荷した太陽電池モジュールの容量は合計で166万kW(キロワット)だった。前年同期比で94%に減少したものの、第1四半期が74%と大幅に落ち込んだ状況から持ち直している(図1)。
その中でも売電を目的とした出力500kW以上の発電事業用が第1四半期の出荷量から1.5倍以上に伸びた。前年比110%で1年ぶりに増加に転じている。さらに住宅用も第1四半期が前年比65%の状態から同84%まで回復した。
太陽電池の国内市場は固定価格買取制度による買取価格が年度ごとに低下してきたことに加えて、太陽光発電に適した場所が減少して一時的なブームは過ぎ去った状況だ。今後も急速に上向く可能性は小さいものの、現在でも固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始していない案件が5000万kW以上も残っている(図2)。当面は発電事業用を中心に太陽電池モジュールの需要は安定して続いていく。
海外向けを含む総出荷量を太陽電池のタイプ別に見ると、市場で主流の多結晶シリコンを搭載したモジュールが前年同期比97%で堅調だ(図3)。このほか化合物タイプを中心とする「その他」も112%に拡大した。一方で価格が高めの単結晶シリコンは72%で伸び悩み、2014年度の第4四半期から前年割れの状態が続いている。
製品の生産地は国内に回帰する傾向が見てとれる。2016年度の第2四半期に国内で出荷した太陽電池モジュールのうち国内生産分が35%を占めた。1年前の33%から2ポイント上昇している。このところ円安・ドル高が進んできたことから、引き続き国内生産の比率が高まる見通しだ。
太陽電池モジュールの出荷量は固定価格買取制度が始まった2012年7月から一気に拡大した。2014年度には過去最高の出荷量を記録したが、2015年度に入ると一転して減少し始めた(図4)。2015年度の総出荷量は前年比81%と大幅に落ち込んでいる。
2016年度も第1四半期に前年比79%(国内出荷量は74%)で低調だったが、ようやく第2四半期になって92%(同94%)まで回復してきた。第3四半期以降も前年を上回ることはむずかしいものの、第2四半期と同程度の出荷量は維持できそうだ。
関連記事
- 太陽電池モジュール出荷がついに減少、パネルメーカーの生存競争が激化
太陽電池モジュールの出荷がついに2015年度は減少に転じた。苦境に立つ太陽電池メーカーはこれらの状況に対し、どのような戦略を取るのか。太陽電池メーカー各社の2015年度の動向と2016年度の取り組みについてまとめた。 - 日本の太陽光発電を増やす、市場構造を変えてコスト低減
再生可能エネルギーの中で最も導入しやすいのが太陽光発電だ。今後も長期的に導入量を拡大するために、政府の研究会が太陽光発電の競争力を強化する方向性をまとめた。最大の課題は導入費と運転維持費を低減することで、日本特有の複雑な市場構造が高コストの一因になっていると指摘した。 - 太陽光発電は2円程度の引き下げに、2017年度の買取価格
2017年度に改正する固定価格買取制度の運用に向けて、再生可能エネルギーの種別に決める買取価格の検討が始まった。注目の太陽光発電ではシステム価格の低下や設備利用率の上昇を理由に2円程度の引き下げになる見通しだ。風力発電やバイオマス発電の買取価格も下げる可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.