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パナソニックの水素戦略、カギは2つの燃料電池蓄電・発電機器(1/2 ページ)

パナソニックは環境展示会「エコプロダクツ 2016」への出展に伴い、同社の水素関連事業について説明。家庭用燃料電池「エネファーム」と開発中の「純水素燃料電池」を基軸に、水素社会の実現に向けた取り組みに注力する。

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 パナソニックは2016年12月8日、環境展示会「エコプロダクツ 2016」(2016年12月8〜10日、東京ビッグサイト)の同社ブースで会見を開き、同社 先端技術本部の小原英夫氏が水素関連事業について説明した。家庭用燃料電池「エネファーム」の普及に向けた取り組みを加速させる他、再生可能エネルギーの活用によるCO2フリーな水素サプライチェーンを視野に入れた純水素燃料電池の実用化に注力していく方針だ。


パナソニック 先端研究本部の小原英夫氏

 都市ガスから生成した水素で発電し、電力と熱を生み出すエネファーム。パナソニックは2009年に初代エネファームを発売して以降、2015年1月末まで累計約5万2000台のエネファームを出荷しており、製造メーカーの1社として高いシェアを持つ。現在販売している家庭向けエネファームは第4世代で、同社ではモデルチェンジごとに高効率化・小型化・低コスト化に注力してきた(図1)。

 初代と第4世代を比較すると、価格と設置面積は約半分以下の160万円、1.7平方メートルまで下がっている。部品点数や白金使用量の削減などが大きく寄与しているという。第4世代からは停電時の電力供給機能も加わった。


図1 パナソニックの歴代エネファームの概要(クリックで拡大)出典:パナソニック

 同社ではエネファームの製品ラインアップの拡充にも注力。第4世代のモデルから、バックアップ用熱源機を一体化したコンパクトなタイプや、反対に熱源機を別置きにすることで、設置場所に制約の多い都市部の住宅にも導入しやすいタイプを用意した。さらに2016年7月からは、集合住宅などのパイプシャフトに設置できる「マンション向けエネファーム」の展開も開始。ユーザー側が導入しやすい製品ラインアップの拡充に注力している。

 こうしたエネファームの普及拡大に向け製品面の強化を進めてきたパナソニックだが、小原氏は「普及拡大にはさらなる製品コストの低減や付加価値の拡充が必要になる」と述べ、今後もさらなる白金使用量の削減など、コスト低減につながる技術開発や機能の拡充を進めていく方針を示した。

 その背景にあるのが、エネファームの普及状況だ。家庭や商業施設の省エネに貢献する製品として、政府は家庭用燃料電池を2020年に140万台、2030年には530万台を普及させる計画を掲げている。政府はこれに向け補助金制度を拡充するなど、エネファームの普及を促してきたが、2016年3月時点で国内累計販売台数は約16万台にとどまっている状況にある。政府目標を達成するには、補助金などの政策だけでなく、低価格化や高機能化など、製品面でもさらなる強化が必要という考えだ。

ZEHが追い風に?

 一方、パナソニックが今後の市場動向としてエネファーム普及の“追い風”になると見込むのが、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」市場の拡大だ。政府は、省エネと創エネで年間の一次消費エネルギー量の収支をゼロにするZEHを普及させる方針を掲げている。小原氏はこうした状況の中で「エネファームは住宅の一次エネルギー消費削減に寄与できる製品として、ニーズが高まるとみている」と述べる。

 また、ITを活用した、新しいエネファームの使い方も模索して需要喚起につなげたい考えだ。その一例となるのが、静岡県三島市に建設中のマンションに導入予定の「T−グリッドシステム」というエネルギーマネジメントシステム(EMS)である。これは静岡ガスと共同開発したシステムで、集合住宅などで各家庭に設置したエネファームの運転を統合管理できるというもの。電力使用量が多い家庭・少ない家庭を判断し、各家庭のエネファームの運転を最適化しながら、電力融通を行うことが可能で、集合住宅全体の電力コストを削減できるメリットがある。三島市に建設するマンションは2017年2月に完成する予定で、全190戸にエネファームを導入し、これらをすべてT−グリッドシステムで管理していくという(図2)。


図2 「T−グリッドシステム」(クリックで拡大)出典:パナソニック
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