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神話を破壊、111%の電力生むデンマークの風力自然エネルギー(2/4 ページ)

風力発電など、再生可能エネルギーに由来する発電所をこれ以上増やすことが難しいという議論がある。系統が不安定化したり、火力発電所の増設が必要になったりするという理由だ。このような主張は正しいのだろうか。風力だけで消費電力の100%以上をまかなったデンマークの事例を紹介する。

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電力の貿易で調整

 日本国内では、太陽光発電や風力発電の出力変化を吸収するため、火力発電の出力調整の他に、大規模蓄電池の導入を計画している。蓄電池は確かに役立つが、必要不可欠な要素なのだろうか。

 デンマークは系統用の大型蓄電池を導入していない。従って次の神話も誤りだ。

神話4:風力発電の大量導入には蓄電池などのバックアップ電源が必要不可欠

 火力発電の規模がそれほど大きくない、さらに大規模蓄電池も導入していないデンマーク。それではどのように出力と消費のバランスを取っているのだろうか。答えは国際連系(電力の貿易)だ。

 図3では国際連系(輸出)の数値と消費電力、発電量を示した。12月1日は発電量が終日、消費量を超えていた。そのため、終日輸出した形になっている。最大輸出量は2000メガワット(MW)に達するほどだ。従って次の神話は成り立たない。

神話5:連系線は系統間の大規模な電力のやりとりには向かない


図3 デンマークにおける輸出・消費・発電の関係 出典:デンマークEnerginet.dkの公開データに基づき本誌作成

電力の貿易立国デンマーク

 デンマークは欧州の中でも特に国際連系線が発達している。あたかも電力の貿易港であるかのようだ。主な貿易相手国は北西のノルウェー、北東と東のスウェーデン、南のドイツ(図4)。


図4 12月1日4時21の状況 風力の比率が消費電力の111%に達した瞬間の状況 出典:デンマークEnerginet.dk

 図4から連系線の接続状況だけを抜き出すと、各国とデンマークの関係がよく分かる(図5)。ここでは触れないが天然ガス用の大規模パイプラインも運用している。


図5 デンマークと周辺諸国を結ぶ国際連系線の配置 赤色は運用中、緑色は建設中、緑色の点線は計画中 出典:デンマークEnerginet.dk

 デンマークの状況を見ると、次の神話も成り立たないことが分かる。

神話6:国をまたがる連系・送電は陸続きでないと困難だ

 デンマークとスウェーデンの間の国際連系は、カテガット海峡を挟んでいる。ノルウェーとの間にあるスカゲラック海峡はさらに幅が広く水深がある。連系線の全長は全長240キロメートル(km)。そのうち海面下だけでも約120kmに達する。最大水深は200メートル(m)以上だ(関連記事)。これは北海道と本州を結ぶ連系線(北本連系)*4)の約5倍の距離(海面下部分)を結んでいることになる。

 海面下120kmの送電が可能であれば、幅42kmの宗谷海峡(北海道・サハリン間)や、幅50kmと130kmの2つの海峡からなる対馬海峡(韓国・対馬・九州)などを結ぶことも検討範囲に入る。いずれも最大水深は200mに達していない。

*4) 北本連系の容量は600MW(60万キロワット)、北海道電力は2018年度までに900MWに増強する計画を発表している。

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