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世界最大のCO2回収プラントが稼働、石炭火力発電のCO2で原油を40倍に増産法制度・規制(1/2 ページ)

米国テキサス州の石炭火力発電所で世界最大のCO2回収プラントが運転を開始した。発電所から排出するCO2の90%以上を回収したうえで、130キロメートル離れた場所にある油田までパイプラインで供給。地中にCO2を圧入すると、分散する原油と混ざり合って生産量を40倍に増やすことができる。

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 まさに一石二鳥でCO2(二酸化炭素)を回収・利用できるプロジェクトが米国で動き出した。南部のテキサス州で運転中の「W.A.パリッシュ石炭火力発電所」の構内に、世界で最大のCO2回収プラントが昨年末の12月29日に運転を開始した。回収したCO2は130キロメートルのパイプラインで油田まで送り込み、地下に貯留する原油と混ぜ合わせて生産量を増やす仕組みだ(図1)。


図1 石炭火力発電所と油田の所在地。出典:JX石油開発

 このCO2回収プラントは日本のJX石油開発と米国の大手電力会社NRG Energyが共同で運営する。NRG Energyは石炭火力発電所の運営者で、回収したCO2を利用する「ウェスト・ランチ油田」の権益もJX石油開発と共同で25%保有している。一方のJX石油開発は国内最大手の石油会社JXホールディングスの傘下で油田やガス田の開発を担う。

 運転を開始したCO2回収プラントでは、石炭火力発電所が排出するCO2の90%以上を回収できる。1日あたりのCO2回収能力は5000トンを超えて、35万台以上のガソリン自動車のCO2排出量に匹敵する。化石燃料の燃焼に伴う排ガスからCO2を回収するプラントとしては世界で最大の回収能力になる(図2)。


図2 石炭火力発電所の全景(上、画像をクリックすると拡大)、CO2回収プラントの設備構成(下)。出典:NRG Energy、三菱重工業

 CO2を回収する設備は吸収塔だ。石炭火力発電所が排出するCO2を含んだガスを冷却してから、吸収塔の下部でアルカリ性の液体にCO2を吸収させる仕組みになっている。さらにCO2を多く含む吸収液を隣接する再生塔に送り、蒸気を使って加熱すると高純度のCO2を取り出すことができる(図3)。


図3 CO2吸収塔の外観(上、画像をクリックすると拡大)、CO2回収プロセス(下)。出典:NRG Energy、三菱重工業

 化学吸収法と呼ぶCO2回収方法で、関西電力と三菱重工業が共同で開発した「KM-CDR Process」を採用している。プラントの建設は三菱重工業を中核とする日米の連合体が担当した。日本のCO2回収技術を米国の石炭火力発電所で先行して実用化した。

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