水分の少ない廃棄物からバイオガス、1日76トン処理して電力と熱に:自然エネルギー
生ごみや紙くずをはじめ汚泥や産業廃棄物を含めて、多種類の廃棄物からバイオガスを作る処理施設の建設工事が香川県で始まった。水分の少ない廃棄物でもメタン発酵方式でバイオガスを作ることができ、ガス発電機とガスボイラーで電力と熱に変換する。2018年に運転を開始する予定だ。
水処理を専門にする栗田工業は、多種類の廃棄物からバイオガスを生成できる「乾式メタン発酵」の技術開発を長年にわたって推進してきた。この技術を生かしたバイオガスの発酵槽を香川県の廃棄物処理会社と共同で建設する。ガスエンジン発電機とガスボイラーを導入して、廃棄物で作ったバイオガスを電力と熱に変換することもできる。
従来の廃棄物処理では生ごみなどを焼却処分する方法が一般的だ。これに対して栗田工業が開発した乾式メタン発酵システムでは、多種類の廃棄物を発酵させてバイオガスを生成できる(図1)。水分の少ない廃棄物でも発酵させることが可能で、発酵後に容量が小さくなった残さを焼却処分するか肥料などに再資源化する。
栗田工業は廃棄物処理会社の富士クリーンと共同で、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するバイオマスエネルギー地域自立システムの実証事業に2015年度から取り組んだ。香川県にある富士クリーンの廃棄物処理施設をモデルに、乾式メタン発酵システムを使って電力や熱を供給する事業のフィージビリティスタディを実施した(図2)。
この実証モデルでは、多種類の廃棄物を混在して処理できるように、メタン発酵に適さない廃棄物を選別する装置を備えたうえで、乾式メタン発酵槽でバイオガスを生成する。さらにガス発電機とガスボイラーを導入して電力と熱を供給するシステムである。栗田工業と富士クリーンはフィージビリティスタディの結果をもとに、乾式メタン発酵によるバイオガス製造設備の建設に着手した。
中核になる乾式メタン発酵槽は細長い縦型の構造で、廃棄物の投入装置と導入管のほかに、発酵後の残さを移送するためのポンプを備えている(図3)。全体の容積は3000立方メートルもあり、乾式メタン発酵槽では国内最大の規模になる。1日に多種類の廃棄物を混在させて約76トンを処理できる。
生成したバイオガスはガスホルダーに貯蔵したうえで、ガスエンジン発電機で電力を作り、ガスボイラーで熱を作ることができる。ガスエンジン発電機は2基で構成して、発電能力は740kW(キロワット)になる。1日24時間の連続運転で年間330日の稼働を想定すると、発電量は586万kWh(キロワット時)を見込める。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して1600世帯分に相当する。
建設工事は機械の設置を含めて2018年3月に完了する。実際に廃棄物を投入して試運転を実施した後に、2018年10月をめどに本稼働に入る予定だ。この事業が軌道に乗れば、全国の廃棄物処理施設に乾式メタン発酵によるエネルギー供給システムを展開できる。
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