日産自動車が無線充電でタッグ、効率最大94%:電気自動車(2/2 ページ)
無線充電の国際規格化が進行中だ。2018年の規格公開を目指して、システムの互換性を確保し、高効率を実現するための試験に成功。日産自動車は無線充電技術に強みがある米WiTricityと協力関係を結び、標準規格の確定に向けた取り組みを進める。
効率は91〜94%
WiTricityは磁気共鳴現象を利用した電力の伝送技術を開発、2007年には2m離れた位置に電力を伝送して電球をともすデモを公開、業界を驚かせた(図4)。
現在は同現象を利用した「WiTricity DRIVEワイヤレス充電システム」をメーカー各社にライセンスを提供している。ライセンス提供先は、トヨタ自動車や自動車部品メーカーである米Delphi、同ドイツBRUSA Elektronik、電子部品メーカーであるTDKや産業機械に強みを持つIHIなど幅広い。自動車メーカーとティア1サプライヤの双方に技術を供与している形だ*3)。DRIVEリファレンスデザインは先ほど紹介したSAE J2954の検証でも用いられた。
DRIVEリファレンスデザインは、送受電の効率が高く、さまざまな規模の送電が可能だ。システムの効率は91〜94%に達する。3.7kWの他、7.7kW、11kWのシステムがあり、22kW以上にも拡張可能だという。
*3) WiTricityは幅広いメーカーと協力しており、各種の標準に協力している。例えば、2016年12月には米GMと出力7.7kWと11kWのシステムについて共同でテストを進めることを発表。2017年1月にはドイツ国内の無線充電の標準化を進める「STILLE標準化プロジェクト」に参加することを発表している。STILLEは、SAE規格やISO、IECと協力関係にある。
多様な環境で無線充電を可能に
WiTricityにはもう1つの柱がある。2016年12月に発表したTMN(Tunable Matching Network)技術だ。実環境で無線充電を行った場合に高い効率を得るために役立つ技術だ。
車の種類によって車高は異なり、地上側のコイルの深さもさまざまだ。つまり無線充電システムの設計、運用段階でコイルの間隔を厳密に制限することは難しい。さらに地上側のコイルと車体側のコイルの水平位置関係にもずれが起こる。
WiTricityが利用する現象は、コイル間の距離や角度、水平位置のずれを比較的受けにくい。しかし、状況に応じて最高の効率を確保しようとすると、何らかの最適化機構が必要だ。これがTMN技術の役割である。TMN技術はDRIVEリファレンスデザインの基で動作する。ソフトウェアを内蔵した小型のハードウェアモジュールを車体側と地上側の双方に設けて用いる。
TMN技術は先ほど紹介したアイダホ国立研究所の事前検証でも利用されており、日産自動車と共同でテストした形になる。
どのような自動車と地上設備の間でも効率の高い充電が可能になり、電力を自由にやりとりできる。このような未来が見えてきた。
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