東芝がネガワット事業に参入、節電市場の“仲介役“に:電力供給サービス
今後活発になるとみられる需要家の節電量(ネガワット)を取り引きする「ネガワット市場」。東芝はこうしたネガワットを取りまとめるアグリゲーター事業に参入すると発表した。
東芝はこのほど、東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)とネガワットアグリゲーターの運用に関する契約を締結したと発表した。これにより、同社は2017年4月からネガワットアグリゲーター事業を開始する。
ネガワットアグリゲーターは、電気事業者などからの要請に応じて企業の電力需要家が削減した電気の需要量(ネガワット)を取り引きする「ネガワット取引」において、多数の需要家をまとめて電力削減量を束ねて取引を行う事業者。同社は、東京電力EPからの要請に応じて、ネガワットアグリゲーターとして複数の需要家に対して電力需要の削減依頼を行い、ネガワットを創出する役割を担う。
東芝は、横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)でのデマンドレスポンス(DR)実証事業や、経済産業省の各種DR実証などを通じて、需要家の特性把握や天候などによる削減量の変動に関する知見を蓄積してきた。これらの知見を活用し、天候や需要家の電力使用状況などに応じて、削減依頼を行う需要家を最適に組み合わせることで、電気事業者などとあらかじめ契約した削減量に対して、高い精度でネガワットを提供することが可能としている。
なお、経済産業省の2016年度「高度制御型ディマンドリスポンス実証事業」のDR実証では、9需要家中、東芝が5需要家に対して削減依頼を行い、最高精度101.4%の削減(契約削減量4000kWに対し、削減量4055kW)を達成した。
東芝は、今回の契約への取り組みに加え、同社が保有する蓄電池やIoTに関する技術、現在横浜市、東京電力EPと実施しているスマートレジリエンス・バーチャルパワープラント(VPP)事業への取り組み通じて得た知見なども活用し、今後もエネルギー分野におけるトータルソリューションを提供していく方針だ。
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