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数十秒で水素を高速製造、新しいアンモニアの分解手法を発見蓄電・発電機器(1/2 ページ)

大分大学の研究グループは、室温でアンモニアと酸素(空気)を触媒に供給するだけで、瞬時に水素を取り出でる新しい触媒プロセスを開発したと発表した。従来アンモニアの分解を行うには触媒層を加熱するために常に外部から熱供給が必要だったが、こうしたプロセスを簡易化し、効率よく水素を取り出せるという。高効率かつ省エネな小型の水素製造装置の実現に寄与するとしている。

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 水素のエネルギー利用を普及させるための課題の1つが、貯留や輸送の簡易化だ。現在は700気圧程度で圧縮する、もしくは−252.9℃に冷却して液体にして運搬する必要があり、コストがかかる。そのため、常温常圧に近い条件で低コストに貯留・運搬できるようにする水素キャリア技術の開発が期待されている。

 水素キャリアの1つとして注目されているのが、アンモニアの利用だ。水素より扱いやすいアンモニアを貯留・輸送し、必要な場所で水素を取り出して利用するという方法が検討されている。ただし、その実現に求められるのがアンモニアから高効率に水素を取り出す技術の確立だ。

 大分大学工学部の永岡勝俊 准教授、佐藤勝俊 客員研究員(京都大学 触媒・電池元素戦略研究拠点 特定助教)らの研究グループは、室温でアンモニアと酸素(空気)を触媒に供給するだけで、瞬時に水素を取り出すことができる触媒プロセスを開発したと発表した。従来アンモニアの分解を行うには触媒層を加熱するために常に外部からの熱供給が必要だったが、こうしたプロセスを簡易化し、効率よく水素を取り出すことができるという。

 アンモニアは水素貯蔵密度が高い一方、その分解は吸熱反応で行われる。そのため、反応を開始させるには高活性な貴金属触媒を用いた場合でも触媒層を400℃以上に加熱し、常に外部から熱供給する必要がある。これが燃料電池や水素エンジンなど、起動や停止を頻繁に行う水素利用機器におけるアンモニアの利用を妨げる要因となっていた。

 研究グループではこの問題を解決する手段として、少量の酸素を導入してアンモニアの一部を燃焼させる酸化分解反応に注目。かつRuO2/γ-AI2O3触媒(酸化アルミニウム担持酸化ルテニウム触媒)へのアンモニアの吸着熱を利用して触媒層を内部から急速に加熱することで、水素製造を瞬時に開始し、高速で水素を製造することに成功した。


開発した新しいアンモニア分解プロセスの概念図 (クリックで拡大) 出典:JST

 具体的にはRuO2/γ-AI2O3触媒を、不活性ガス雰囲気下で加熱処理することで触媒表面に酸点を発現させる。ここに室温でアンモニアと酸素(あるいは空気)の混合ガスを供給すると、アンモニアが触媒上の酸点に吸着することで大きな吸着熱が発生して触媒が自己発熱し、アンモニア酸化分解の開始温度まで瞬時に加熱されるという仕組みだ。ガスを供給するだけで反応がはじまり、水素を生成できる。

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