風力発電の新型軸受を開発、寿命2.5倍で小型軽量化も実現:蓄電・発電機器
NTNは、寿命を従来品比2.5倍に伸ばした大型風力発電装置向けのころ軸受を開発した。軸受内部のころを左右列で非対称設計とすることで、耐摩耗性能を高めた他、軽量化ニーズにも対応する。
NTNは、大型の風力発電装置向けの新しいころ軸受を開発した。軸受内部のころを左右列で非対称設計とすることで、軸受の計算寿命を従来比約2.5倍、PV値(接触面圧「P」と、転がりすべり速度「V」を掛け合わせた数値)を約30%低減し、耐摩耗特性も向上させたのが特徴だ。
風力発電装置の主軸用軸受(主軸受)には、高負荷容量で取り付け誤差に対する許容能力に優れた自動調心ころ軸受が多く使用されている。主軸受は、ロータやブレード(翼)などの重量が軸に対して垂直方向に作用するラジアル荷重に加えて、風荷重が軸に対して水平一方向に作用するアキシアル荷重を受けるため、フロント列(ブレードに近い側)に比べて、リア列(遠い側)により大きな荷重が作用する。また、自動調心ころ軸受特有の転がりすべりと、潤滑不足による軌道面ところの金属接触により、PV値の高い箇所から軌道面の摩耗が進行し、特にリア列の外輪にはく離や割れが発生することがみられた。
今回の開発品は、こうした風力発電装置主軸受特有の使用条件に対応するため、ころの設計を見直すことで、寿命と耐摩耗特性を向上させた。開発品の接触角は従来品と比べフロント列は小さく、リア列は大きくし、ころの長さはフロント列よりリア列を長くすることで、風によるアキシアル荷重をリア列で効率よく受け、ラジアル荷重をフロント列で積極的に受けることができる設計とした。
フロント列、リア列のころで荷重を適切に分担することで、風力発電装置主軸受特有の使用条件で、計算寿命が約2.5倍に向上(従来品比)するなど長寿命化と耐摩耗特性の向上を実現している。また、内輪に中つばを有し、ころの最大径位置を中心からずらした設計とすることで、ころのスキューを防止し、ころの安定性を実現している。
開発品は、主要寸法(内輪内径、外輪外径、幅寸法)を従来品と同寸法で設計可能だ。さらに、従来品と同等の寿命を持つ主軸受を設計する場合は、従来品に対し内径を約10%、質量を約30%減らすことができ、風力発電装置のコンパクト化・軽量化に貢献する。
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