充電6分でEVが320km走る、東芝が次世代リチウムイオン電池を開発:電気自動車
東芝は性能を高めた新しいリチウムイオン電池の試作に成功。32kWhのバッテリーを搭載する電気自動車(EV)の場合、6分間の充電で320kmの走行が可能になるという。
東芝は2017年10月3日、負極材にチタンニオブ系酸化物を用いた次世代リチウムイオン電池(次世代SCiB)の試作に成功したと発表した。負極材料に一般的な黒鉛を利用する場合と比較して、約2倍の容量を持つのが特徴だ。エネルギー密度が高く、超急速充電が可能なため、電気自動車(EV)に適しているという。今後、電池のエネルギー密度のさらなる向上を図り、2019年度の製品化を目指す方針だ。
今回試作したのは容量50AhのEV用の電池。負極材として採用したチタンニオブ系酸化物は、超急速充電や低温充電でも電池の劣化や短絡の原因となる金属リチウムの析出が無く、耐久性と安全性に優れるとされる。また、同社独自の合成方法により、結晶配列の乱れが少ないという特徴がある。結晶構造中にリチウムイオンを効率的に供給することができ、現行SCiBの特徴である高い安全性と急速充電特性を維持しながら、負極容量(単位体積当たりの容量)を黒鉛に比べて2倍に増加させることが可能になった。
電池寿命や、耐低温特性も現行のSCiBと同等レベルの性能を実現している。試作した電池を用いた実証では、充放電を5000回繰り返しても90%以上の電池容量を維持し、マイナス10℃の低温環境下においても10分間の超急速充電が行えることを確認した。
現行のSCiBは負極材にチタン酸リチウムを採用しており、自動車、バス、鉄道、エレベーターなどの産業機器、発電所などのインフラ設備に活用されている。中でもEV用の二次電池においては、EVのさらなる普及と利便性向上を目的に、高いエネルギー密度を持ち、超急速充電に対応する次世代蓄電池のニーズが高まっている。
東芝によると、試作したSCiBを32kWhの蓄電池を持つEVに搭載すると、6分間の超急速充電で、従来のリチウムイオン電池を搭載したコンパクトEVと比較して、走行距離を3倍の320km(JC08モードでの走行距離換算)に延ばすことが可能という。
なお、今回の試作の取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の成果を一部活用している。
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