風力発電を大量導入しても系統安定、東工大が新型の制御手法:自然エネルギー(1/2 ページ)
東京工業大学は、風力発電が大規模に導入された電力システムの系統安定度低下を防ぐ、風力発電機用のプラグイン型制御技術を開発した。この制御技術により、風力発電の導入が拡大しても、系統の安定性を確保できるという。
風力発電機の基数が増加すると、電力システムの系統安定度は低下する
東京工業大学(東工大)は2017年10月、風力発電が大規模に導入された電力システムの系統安定度低下を防ぐ、風力発電機用のプラグイン型制御技術を開発したと発表した。従来手法では困難だった、風力発電機が大量に連系された電力システムでも系統安定度の向上が可能になるという。
風力発電は世界的に市場を拡大しており、国内においても2016年から2030年に市場規模が7倍となる試算が発表されている。風力発電の導入がこれまで以上に進むことは必至な状況だが、風力発電の大規模連系にはいくつか課題が存在する。この課題の1つが、電力システムに連系する風力発電機数増加による、電力システム系統安定度の低下だ。系統安定度が低下すると、落雷などの系統擾乱(じょうらん)をきっかけとして停電などの障害が発生しやすくなる。
系統安定度の向上には、風力発電機の制御技術が大きな役割を果たすとされ、今後の風力発電の大量導入に向けて非常に重要な要素となる。
系統安定度を高めるため、従来より用いられている制御技術手法として、発電機に備え付けられているPI(比例積分)制御器などのパラメーター調整がある。これは、現在までの電力システム運用経験から制御器パラメーターを調整するもので、東工大によると、風力発電が大量導入された将来の電力システムにおいて、系統安定度を向上させることができる保証はないという。
この他のアプローチとして、電力システム全体の数理モデルが得られていることを前提に、従来の制御理論を用いて新しい発電機用制御アルゴリズムを構築する手法も挙げられる。しかし、現在の電力システムは非常に複雑かつ大規模であるため、電力システム全体の数理モデル導出は非常に困難とし、電力システムの部分的な変化に対しても、数理モデルを再導出する必要があるため、変化が予想される将来の電力システムには適していないとする。
よって、制御アルゴリズムを発電機単体の数理モデルのみ参照し構築する「プラグイン型」制御技術こそ、将来の電力システムへの対応を果たしつつ、系統安定度の向上が可能だという。
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